著者
三野 和雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マクロ経済学では、依然として経済主体が同質であることを前提とする代表的家計モデルが中心的な役割を果たしている。本研究は、経済主体の異質性を明示的に考慮したマクロ動学分析を行い、同質な経済主体を前提にした従来の標準的理論がどのように修正されるかを検討した。特に、(1)世代重複モデルにおける世代間の消費の外部効果が生み出す影響、(2)無限視野を持つ家計に資産保有の異質性があるような成長モデルにおいて、消費の外部性が長期的な資産分配に及ぼす効果、(3)家計間の時間選好率や選好が異なる成長経済における財政・金融政策の効果、(4)2国間が非対称な場合の2国動学モデルのふるまい、を中心に検討を行った。いずれの場合も、家計の同質性を前提とする標準的な理論では見られない分析結果が得られ、代表的個人の仮定が、分析を簡明にする反面、現実の経済で生じている重要な現象のいくつかを捉え損ねる可能性が高いことを確認した。