著者
片倉 慶子 河上 友宏 渡辺 洋一 藤井 英二郎 上原 浩一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.606-612, 2019-05-31 (Released:2019-07-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

現在日本に生育するイチョウは中国から伝来したものだが,日本各地に拡散された過程は明確でない。本研究では,樹齢が長く日本に伝来した当初に近い遺伝的特徴を維持していると考えられる各地のイチョウ巨木を対象とし,遺伝的変異の地域的特性から,日本におけるイチョウの伝播経路および伝播方法の推定を試みた。九州から本州東北部の胸高幹周8 m以上の巨木から葉を採取し,180個体199サンプルについて8つのマイクロサテライトマーカーを用いて解析を行った。解析の結果,8遺伝子座から8~21の対立遺伝子を検出し,142種類の遺伝子型が認識され,13種類の遺伝子型が70個体で共有されていた。遺伝子型を共有している個体はクローンであると考えられ,地理的に離れて分布している場合もあることから,日本におけるイチョウの伝播には種子だけでなく挿し木等の方法も用いられたと考えられる。遺伝的多様性を比較すると,遺伝子多様度(HE)は0.57-0.82,アレリックリッチネス(AR)は4.51-8.49を示し,どちらも他地域に比べ東日本で低い値を示したため,中国から西日本にイチョウが伝来し,その一部が東日本に運ばれたと考えられる。
著者
上原 浩一 伊藤 元己 渡辺 洋一
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はアザミ属植物について次世代型DNAシークエンサーを用いた遺伝解析と形態形質の計測をおこない、現在適用されている分類の妥当性を検討した。アザミ属の系統は、葉緑体ゲノムのシークエンス等を進めた結果、従来の節・亜節の区分とは一致せず、日本産のアザミ属は北海道の系統と、本州以南に分布する系統の2つに大別されることが示された。また、近縁種間で、形態形質を比較解析した結果、種の識別ができない例が見られたほか、カガノアザミ亜節の2倍体種についてRAD-seq法による解析では、集団内の遺伝的変異が大きく、種間変異には有意性が認められなかった。この結果からアザミ属全体の分類の再検討が必要と考えられた。