著者
平川 善之 上堀内 三恵 山崎 登志也 宮前 雄治 高橋 精一郎 甲斐 悟
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0313, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】安定した姿勢制御には下部体幹筋群・股関節周囲筋群の協調性が重要とされている。臨床においては、腹筋のトレーニング後に運動中の姿勢が安定することを経験する。しかし体幹筋の筋力トレーニングが股関節周囲筋に与える影響は不明である。そのため、下部体幹筋のトレーニング前後の筋活動を比較することで股関節周囲筋に与える影響を調べることを目的とした。【対象】健常男性21名。平均年齢26.6±3.7歳 平均身長172.4±5.8cm 平均体重63.7±5.9kg。【方法】一側下肢を側方へ踏み出す動作にて、下部腹筋と股関節周囲筋の筋活動を記録した。そして片側の内腹斜筋のみトレーニングを行い、その後同様の動作中の筋活動を記録した。測定動作は肩幅大の開脚立位より、検査側の側方へ20cm踏み出し、80%荷重後元に戻った。荷重量はツイングラビコーダー(アニマ株式会社)を用いてフィードバックした。またFoot switch EM434(Noraxon社)を同期させ、検査側の接踵・離踵を判断した。筋活動は表面筋電図Tele Myo2400(Noraxon社)で記録した。被験筋は、検査側の内腹斜筋・大殿筋・中殿筋・内転筋と、先行研究にて左右方向の動きを制御するとされる反対側の内腹斜筋・内転筋とした。筋力トレーニングはEMGフィードバックをしながら、内腹斜筋以外の筋収縮がないよう注意しつつ行った。その後、十分な休憩を取った。筋活動の比較は、各筋の筋活動を最大筋活動で除して%MVCを求め、トレーニング前後で1:筋活動量の比較(検査側の接踵から離踵までの%MVCを比較)と2:筋活動増加時期の比較(接踵時を基準時とし、その前後を50ms毎に10区間に区切り各区間内で%MVCを比較)をした。統計処理はWilcoxon符号付順位検定を用い、危険率5%未満を有意とした。【結果】筋活動量の比較では、検査側の内腹斜筋及び対側の内転筋で、トレーニング後に有意に大きくなる傾向があった。筋活動増加時期の比較では、内腹斜筋、中殿筋、対側の内転筋において、接踵時の前250~450msの期間にトレーニング後に大きくなる結果が得られた(p<0.05)。他の筋には有意差は見られなかった。【考察】内腹斜筋のトレーニングによる即時効果として、トレーニング後の内腹斜筋と対側の内転筋に筋活動の増大が見られた。これらはLeeらのいう、骨盤帯の安定性に寄与する筋群とされるアウターユニットの「外側系」を構成する筋群であり、機能的な連結が考えられた。また筋活動の増加は、すでに荷重負荷の急激な増加が起こる接踵時より以前にみられており、負荷に対する予測的活動として増加したものと推測される。健常者に比べ腰痛患者では、上下肢の運動以前におこる体幹筋の予測的活動が少ないとする報告がある。今回の体幹筋のトレーニングにより股関節周囲筋にも変化が見られ、このことが姿勢の安定性に影響を与えていることが考える。