著者
古賀 麻奈美 長谷 麻由 芳野 千尋 籾井 佑都 松本 彬 田鍋 拓也 有吉 雄司 山本 浩由 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3260, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】大脳皮質でストレスと認知された刺激は自律神経系,内分泌系,免疫系を介して全身に伝達され,身体的,心理的な反応を引き起こし,精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金になると考えられている.そこでリラクセーションとして用いられている深呼吸のストレス緩和効果を明らかにする.【方法】健常成人女性15名(平均21.8±0.7歳)を対象とした. ストレス後の深呼吸の効果をみるために,深呼吸介入と非介入の条件で測定日を2日以上離してランダムに測定した.対象者には椅子坐位での5分間の安静後にストレス負荷として内田クレペリン検査を15分間実施し,その後,深呼吸群は5分間の深呼吸行い,コントロール群は5分間の安静を行った.深呼吸はストップウォッチを見せながら呼息6秒・吸息4秒の条件で実施した.深呼吸非介入時は安静を保った.安静開始4分後,ストレス負荷12分後,深呼吸開始及び深呼吸非介入時には安静4分後に,唾液アミラーゼを測定(CM-2.1,ニプロ株式会社)した.飲食物の影響を避けるため,食後直ぐには行わなかった.測定は,室温23~26°C,湿度30~50%の環境で実施した.統計学的分析は,二元配置分散分析と多重比較検定を行った.有意水準は5%未満とした.【説明と同意】対象者には本研究の目的および方法を説明し,同意を得たうえで測定を実施した.また,被験者はいつでも研究への参加の同意を撤回する権利を有し,それによる不利益は決して生じないことを説明した.【結果】深呼吸介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ安静時 45±21.3 KU/L,ストレス負荷時:83.2±33.3 KU/L,深呼吸時:40.7±16.3KU/L であった.深呼吸非介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ安静時51.7±17.9 KU/L,ストレス負荷時:86.2±23.0 KU/L,深呼吸非介入時:69.8±33.2KU/Lであった.ストレス負荷時と深呼吸介入時には統計学的有意差(p<0.05)が認められたが,深呼吸非介入時には有意差が認められなかった.【考察】本研究の結果,唾液アミラーゼの値からは深呼吸がストレスを緩和する効果があることが示された.ストレス負荷時では,大脳皮質でストレスと認識された刺激により大脳辺縁系が不安,怒りなどの情動を引き起こし,視床下部へと興奮が伝わった結果,内分泌系や自律神経系に作用し交感神経を刺激したことが考えられる.その結果,交感神経系の指標とされるノルエピネフリンの増幅器として働く唾液アミラーゼの分泌が亢進されたことが考えられる.生理学的に,深呼吸をすると迷走神経が興奮して心拍数減少が認められており,副交感神経活動が優位となるといわれている.また,深呼吸時に吸息時間より呼息時間を長くすることで,副交感神経をより高めるという報告もみられた.このことから,深呼吸を行うことで副腎髄質のノルエピネフリン分泌と交感神経の興奮が抑制され,唾液アミラーゼの値は減少し,副交感神経が有意に働いたことでストレスを緩和したと考えられる.【理学療法学研究としての意義】理学療法領域での深呼吸の有用性に関しては,肺気腫や気管支喘息などの呼吸器疾患患者に対する症状改善が報告されている.また,平成19年の労働者健康状況調査では仕事上のストレスを感じている人が58%,すなわち2人に1人がストレスを感じていると報告されている.臨床で接する対象者や医療従事者も日常生活で様々なストレスを抱えていると考えられ,ストレスに対するコントロール法が必要とされている.今回の研究においては,深呼吸を理学療法に取り入れることで治療場面のみならず,予防医療の一環として有用である可能性が示された.
著者
岡田 裕隆 濱田 輝一 肥後 成美 永崎 孝之 二宮 省悟 福留 英明 山本 広伸 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.337-341, 2009 (Released:2009-07-24)
参考文献数
8

〔目的〕超音波診断装置を用いて足関節角度変化に伴う連続した遠位脛腓結合の可動性を明らかにすることである。〔対象〕足部機能に問題のない健常成人14名で,左右を合わせ28肢とした。〔方法〕対象者に底背屈運動を行わせ,前額面における連続した遠位脛腓結合の変化を超音波画像にて記録し,画像解析により脛骨と腓骨の開離距離を計測した。〔結果〕脛骨と腓骨の開離距離は,足関節の底背屈変化に伴い増大を示した。また,その変化は均一的,直線的ではなく,底屈及び背屈初期までは緩やかに増加し,背屈後期では急速に増加するという特徴的なものであった。〔結語〕遠位脛腓結合の開離には,足関節背屈時の距骨滑車関節の前後における左右幅の変化だけでなく,筋収縮による腓骨自体の動きや距骨の中枢側への引き込みによる距骨の上下の左右幅の変化に伴った一連の複合的な作用が影響する可能性が示唆された。
著者
高橋 精一郎 鳥井田 峰子 田山 久美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.261-266, 1989-07-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
6

現在,歩行速度の評価基準には定まったものがない。例えば10m15秒,10m10秒あるいは健常人よりも若干遅めといったもので,その理論的根拠にも乏しい。はたして社会生活をしていく上でこの速さで十分であろうか? という疑問から,少なくとも横断歩道を安全に渡れる速さがなければいけないのではないかと考えた。そこで130ヵ所の横断歩道の青信号の点灯点滅時間を調べ,横断に必要な速さを算出した。その結果,9割以上の横断歩道を渡るには1m/secの速さが必要であることがわかった。これを歩行評価基準の一つとすべきであるし,訓練においてもこの速さを獲得すべきである。
著者
古賀 麻奈美 長谷 麻由 芳野 千尋 籾井 佑都 松本 彬 田鍋 拓也 有吉 雄司 山本 浩由 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.H4P3260-H4P3260, 2010

【目的】<BR>大脳皮質でストレスと認知された刺激は自律神経系,内分泌系,免疫系を介して全身に伝達され,身体的,心理的な反応を引き起こし,精神疾患以外にも生活習慣病など様々な疾患の引き金になると考えられている.そこでリラクセーションとして用いられている深呼吸のストレス緩和効果を明らかにする.<BR><BR>【方法】<BR>健常成人女性15名(平均21.8±0.7歳)を対象とした. ストレス後の深呼吸の効果をみるために,深呼吸介入と非介入の条件で測定日を2日以上離してランダムに測定した.対象者には椅子坐位での5分間の安静後にストレス負荷として内田クレペリン検査を15分間実施し,その後,深呼吸群は5分間の深呼吸行い,コントロール群は5分間の安静を行った.深呼吸はストップウォッチを見せながら呼息6秒・吸息4秒の条件で実施した.深呼吸非介入時は安静を保った.安静開始4分後,ストレス負荷12分後,深呼吸開始及び深呼吸非介入時には安静4分後に,唾液アミラーゼを測定(CM-2.1,ニプロ株式会社)した.飲食物の影響を避けるため,食後直ぐには行わなかった.測定は,室温23~26°C,湿度30~50%の環境で実施した.統計学的分析は,二元配置分散分析と多重比較検定を行った.有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【説明と同意】<BR>対象者には本研究の目的および方法を説明し,同意を得たうえで測定を実施した.また,被験者はいつでも研究への参加の同意を撤回する権利を有し,それによる不利益は決して生じないことを説明した.<BR><BR>【結果】<BR>深呼吸介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ<BR>安静時 45±21.3 KU/L,ストレス負荷時:83.2±33.3 KU/L,深呼吸時:40.7±16.3KU/L であった.<BR>深呼吸非介入時の唾液アミラーゼの値は,それぞれ安静時51.7±17.9 KU/L,ストレス負荷時:86.2±23.0 KU/L,深呼吸非介入時:69.8±33.2KU/Lであった.ストレス負荷時と深呼吸介入時には統計学的有意差(p<0.05)が認められたが,深呼吸非介入時には有意差が認められなかった.<BR><BR>【考察】<BR>本研究の結果,唾液アミラーゼの値からは深呼吸がストレスを緩和する効果があることが示された.ストレス負荷時では,大脳皮質でストレスと認識された刺激により大脳辺縁系が不安,怒りなどの情動を引き起こし,視床下部へと興奮が伝わった結果,内分泌系や自律神経系に作用し交感神経を刺激したことが考えられる.その結果,交感神経系の指標とされるノルエピネフリンの増幅器として働く唾液アミラーゼの分泌が亢進されたことが考えられる.生理学的に,深呼吸をすると迷走神経が興奮して心拍数減少が認められており,副交感神経活動が優位となるといわれている.また,深呼吸時に吸息時間より呼息時間を長くすることで,副交感神経をより高めるという報告もみられた.このことから,深呼吸を行うことで副腎髄質のノルエピネフリン分泌と交感神経の興奮が抑制され,唾液アミラーゼの値は減少し,副交感神経が有意に働いたことでストレスを緩和したと考えられる.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>理学療法領域での深呼吸の有用性に関しては,肺気腫や気管支喘息などの呼吸器疾患患者に対する症状改善が報告されている.また,平成19年の労働者健康状況調査では仕事上のストレスを感じている人が58%,すなわち2人に1人がストレスを感じていると報告されている.臨床で接する対象者や医療従事者も日常生活で様々なストレスを抱えていると考えられ,ストレスに対するコントロール法が必要とされている.今回の研究においては,深呼吸を理学療法に取り入れることで治療場面のみならず,予防医療の一環として有用である可能性が示された.
著者
堤 文生 橋元 隆 高橋 精一郎 石橋 敏郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.783-783, 2003

【はじめに】理学療法士・作業療法士の教育において、専門的知識の習得のみでなく医療人としての人間性・社会性という職業への適正も重要な因子である。医療の臨床場面や教育現場での対人関係を円滑にする方法として、交流分析が活用されている。エゴグラムは、自我状態の機能分析をグラフ化したものであり、そのパターンより自分の性格特性や行動パターンの特徴を理解するものである。新入生の入学初期にエゴグラムを実施し、学年末の成績と留年及び中退に関与すると思われるエゴグラムの特徴を求め、興味ある結果を得たので報告する。【対象及び方法】対象は、平成元年より平成13年までに入学した学生498名(PT278名、OT220名:男性200名、女性298名)である。入学直後に東大式エゴグラム(TEG)を実施し、その結果と3月時の学年末成績結果(順位より上位・中位・下位とした)及び留年・退学との関連を比較検討した。なお、留年及び退学者の規定は、3年次卒業までの該当者とし述べ53名であった。27のエゴグラムパターンを類似した8型に分類し、独立性の検定を行い男女別、学科別、成績順位別、留年・退学者と進級者別に比較検討した。更に、TEGの5要素を変量として主成分分析を行い、各学生の類似性を求めた。データの入力・出力及び統計解析は、専用のソフトを自作した。【結果及び考察】新入生のエゴグラムパターンで出現率の高いのは、N型(お人好し・おふくろさん・ワーカーホリックタイプ)が21.9%、台形型(マイホーム・ボランティア・自己中心タイプ)が11.6%、NP優位型(世話やきタイプ)が11.0%、M型(昔の親分タイプ)が10.2%、V型(イライラ・空想家・忍の一字タイプ)が10.0%である。逆に出現率の低いのは、W型(自罰タイプ)、右下がり型(頑固親父・管理者タイプ)、逆N型(孤高の人・プレイボーイ・思い込みタイプ)、U型(フラストレーション・爆発・いじけやすいタイプ)である。新入生の特徴として、NPの高い学生が多く共感や思いやりの保護的な性格傾向をもっており、対患者関係においても優しい面がスムーズに表出できる。反面、CP的要素(厳しさ、批判的)が低いため自分に流されやすく義務感・責任感など社会秩序の維持能力の低さが観察される。TEGを8型に分類しχ二乗検定を行った結果、男女別(p=0.1239)、学科別(p=0.5902)、成績別(p=0.5190)と有意差を示さなかった。留年・中退生と進級生の比較では、U型及びV型が留年・中退生に多い傾向を示した(p=0.0211)。留年生群は、成績下位群と同様に、A低位型(空想家タイプ)やU型(爆発タイプ)が多く合理的・計画的な思考行動が苦手なタイプで系統だった学習方法をうまく組み立てられない学生群と思われる。中退生15名の内、成績不良以外の理由により学生は5名であったが、各学生に共通のパターンは確認できなかったことより、未然の対応の難しさを痛感する。主成分分析の結果では、CP・NP・ACが第1主成分(Z1)と、A・FCが第2主成分(Z2)と関連を有した。
著者
中元 唯 岡 真一郎 高橋 精一郎 黒澤 和生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101553, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】疼痛は,組織破壊よる自発痛と,潜在的な組織障害および不快な感覚が絡み合った慢性疼痛がある.慢性疼痛は,自律神経反応との関連が深いことから交感神経の抑制を目的とした星状神経節や胸部交感神経節ブロック,星状神経節に対する直線偏光近赤外線照射などが用いられている.一方,理学療法においては,胸椎のマニピュレーションが指先の皮膚温を上昇させ,軽微な圧迫刺激が遅く鈍い痛みを特異的に抑えることから,胸背部への体性感覚入力が自律神経系に影響を及ぼす可能性がある.本研究の目的は,胸背部に対する持続的圧迫刺激が自律神経活動,末梢循環動態におよぼす影響について調査することとした.【方法】対象は,健常成人男性10 名(22.2 ± 1.2 歳)とした.測定条件は,室温25°前後で対象者を背臥位とし,メトロノームを用いて呼吸数を12 回/分で行うよう指示した.測定項目は,胸背部硬度,体表温度,心拍変動解析とした.胸背部への徒手的圧迫刺激は,簡易式体圧・ズレ力同時測定器プレディアMEA(molten)を用い,右第2 −4 胸椎棘突起の1 横指下外側に圧力センサーを接着して50mmHgに調整した.胸背部硬度は,生体組織硬度計PEK-1(井元製作所)を用いて右第2 −4 胸椎棘突起の1 横指下外側をそれぞれ3 回測定した.体表温度は,防水型デジタル温度計SK-250WP(佐藤計量器製作所)を用い,右中指指尖を1 分ごとに測定した.心拍変動解析は,心拍ゆらぎ測定機器Mem-calc(Tawara)を用いて心電図R-R 間隔をTotal Power(TP),0.04 〜0.15Hz(低周波数帯域,LF),0.15 〜0.40Hz(高周波数帯域,HF)として行った.自律神経活動の指標は,自律神経全体の活動をTP,副交感神経活動をHFn(HF/(LF+HF)),交感神経の活動をLF/HFとした.測定プロトコールは,圧迫前の安静10 分(以下,圧迫前),胸背部圧迫10 分,圧迫後の安静10 分(以下,圧迫後)とした.統計学的分析はSPSS19.0Jを用いて,圧迫前後の比較を対応のあるt検定およびWilcoxon符号順位和検定を行い,有意水準を5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき,対象者には研究内容を十分に説明し書面にて同意を得た後に測定を実施した.【結果】TPは圧迫前後で有意差がなかった.胸背部硬度は,圧迫前57.0 ± 4.3 から圧迫後55.8 ± 3.7 と有意に低下した(p<0.01).体表温度は,圧迫前33.8 ± 0.6℃から34.4 ± 0.6℃と有意に上昇した(P<0.05).心拍数は,圧迫前70.1 ± 12.9bpmから圧迫後67.6 ± 11.5bpmと有意に低下した(p<0.05).HFnは,圧迫前10.0 ± 4.7 から圧迫後13.0 ± 4.3 と有意に増加した(p<0.05).LF/HFは,13.5 ± 7.1 から圧迫後10.1 ± 5.4 と有意に低下した(P<0.05).【考察】胸背部硬度は圧迫後に有意に低下した.皮膚の静的刺激を感知する受容器は順応が遅く,持続的な圧迫刺激により皮神経支配領域のC線維を抑制すると報告されている.また,皮神経支配領域における求心性線維の興奮は,軸索反射により求心性神経終末から血管拡張物質を放出させる.胸背部硬度の低下は,圧迫刺激による皮膚受容器の順応,C線維の抑制と血管拡張に起因すると推察された.胸背部圧迫後のHFnは有意に上昇し,LF/HFは有意に低下した.ラットによる先行研究では,後根求心性線維への刺激は逆行性に交感神経節前ニューロンにIPSPを引き起こすとともに,脊髄を上行し上脊髄組織で統合されて交感神経節前ニューロンに投射し,副交感神経の興奮と交感神経の長期抑制を起こす.HFnの上昇とLF/HFの低下は,胸背部への圧迫刺激が副交感神経の興奮と交感神経の抑制を引き起こしたと考えられる.さらに,皮膚血管は交感神経性血管収縮神経によって支配されており,交感神経の抑制が皮膚血管を拡張させたため右中指体表温度が上昇したと考えられる.胸背部圧迫後の心拍数は有意に低下した.Miezeres(1958)は,犬の胸部交感神経節機能は左右差があり,右側が心拍数,左側が伸筋収縮力を増加させると報告している.本研究における圧迫後の心拍数の減少は,右胸部交感神経節の活動が抑制されたためと考えられる.胸背部への持続的圧迫刺激は,交感神経を抑制し,副交感神経を興奮させることが示された.上脊髄組織は,交感神経の長期抑制させることから胸背部圧迫刺激の持続性について検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】胸背部への軽度な持続的圧迫刺激は,慢性疼痛を有する患者の治療法のとして有用な可能性がある.
著者
山口 寿 高橋 精一郎 甲斐 悟
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P2140, 2009

【目的】運動としての歩行は安全性や利便性から運動処方に多く利用されている.歩行は屋内や屋外など様々な環境で行われることが多い.歩行に関する呼吸循環反応の研究は多く行われているが,屋内外での歩行環境の違いによる変化やその相違を検討した研究は少ない.今回,屋内および屋外平地歩行においての呼吸循環反応の変化や相違を比較分析することで,今後の運動処方,指導に資することを目的とした.<BR>【方法】対象者は研究内容を説明し,本研究参加に同意を得た健常男性14名(平均年齢21.9±3.8歳)とした.測定は平地歩行の可能な屋内と,屋外では市街地および運動公園の3つの条件とし,屋内は1周60mのトラックを作成し周回させた.屋外は平地歩行の可能な市街地とウォーキングコースのある運動公園とした.歩行様式は自由歩行,歩行速度は時速6kmとし中等度の運動強度に設定した.測定項目は心拍数,酸素摂取量,代謝当量(以下METs)ならびに自覚的運動強度(以下RPE)とし,測定機器は呼吸代謝測定装置VO2000(Medical Graphics社製)を用いた.心拍数と酸素摂取量は安静時と運動開始から20分間を測定し,運動終了時にRPEを聴取した.統計学的処理にはDr.SPSS IIfor Windowsを用いた.各条件の心拍数,酸素摂取量,METsの実測値と変化率の比較には一元配置分散分析を行った.RPEの比較にはボンフェローニの不等式による多重比較を行った.有意水準は5%未満とした. <BR>【結果】3つの条件における生理的反応である心拍数,酸素摂取量, METsは,実測値の経時的変化と安静時を基準値とした変化率のいずれにも統計学的な有意差は認められなかった.主観的反応ついては各条件でのRPEは屋内,市街地,運動公園の順に有意に高かった.<BR>【考察】同一速度,歩行様式の運動負荷で,気温もほぼ同じであれば,運動処方において屋内と屋外で運動処方を変更せずに用いても,生理的反応に影響は少ないことが示唆された.主観的反応であるRPEに相違がみられたのは,屋内と屋外の環境の違いが関与したと推測される.運動公園では他の2条件の環境に比較し,生理的反応と主観的反応との一致が高く屋内では差がみられた.運動公園には樹木や植物も多く,他の環境に比較し心理的にリラックスできる環境であり,それに比べ屋内は周回コースで,景観の変化もなく繰り返しであったことが,主観的に負荷を強く感じたと推測される.RPEを用いての運動処方では屋内外の環境が,対象者に与える影響を考慮する必要性が示唆される.今回の研究はRPEに関連してくる心理的因子についての詳細な解明には至っていない.また対象者は健常成人であり,呼吸循環反応は年代や性別などに影響を受けやすいものであるため,これらについての詳細研究が今後の課題と考える.
著者
平川 善之 上堀内 三恵 山崎 登志也 宮前 雄治 高橋 精一郎 甲斐 悟
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0313, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】安定した姿勢制御には下部体幹筋群・股関節周囲筋群の協調性が重要とされている。臨床においては、腹筋のトレーニング後に運動中の姿勢が安定することを経験する。しかし体幹筋の筋力トレーニングが股関節周囲筋に与える影響は不明である。そのため、下部体幹筋のトレーニング前後の筋活動を比較することで股関節周囲筋に与える影響を調べることを目的とした。【対象】健常男性21名。平均年齢26.6±3.7歳 平均身長172.4±5.8cm 平均体重63.7±5.9kg。【方法】一側下肢を側方へ踏み出す動作にて、下部腹筋と股関節周囲筋の筋活動を記録した。そして片側の内腹斜筋のみトレーニングを行い、その後同様の動作中の筋活動を記録した。測定動作は肩幅大の開脚立位より、検査側の側方へ20cm踏み出し、80%荷重後元に戻った。荷重量はツイングラビコーダー(アニマ株式会社)を用いてフィードバックした。またFoot switch EM434(Noraxon社)を同期させ、検査側の接踵・離踵を判断した。筋活動は表面筋電図Tele Myo2400(Noraxon社)で記録した。被験筋は、検査側の内腹斜筋・大殿筋・中殿筋・内転筋と、先行研究にて左右方向の動きを制御するとされる反対側の内腹斜筋・内転筋とした。筋力トレーニングはEMGフィードバックをしながら、内腹斜筋以外の筋収縮がないよう注意しつつ行った。その後、十分な休憩を取った。筋活動の比較は、各筋の筋活動を最大筋活動で除して%MVCを求め、トレーニング前後で1:筋活動量の比較(検査側の接踵から離踵までの%MVCを比較)と2:筋活動増加時期の比較(接踵時を基準時とし、その前後を50ms毎に10区間に区切り各区間内で%MVCを比較)をした。統計処理はWilcoxon符号付順位検定を用い、危険率5%未満を有意とした。【結果】筋活動量の比較では、検査側の内腹斜筋及び対側の内転筋で、トレーニング後に有意に大きくなる傾向があった。筋活動増加時期の比較では、内腹斜筋、中殿筋、対側の内転筋において、接踵時の前250~450msの期間にトレーニング後に大きくなる結果が得られた(p<0.05)。他の筋には有意差は見られなかった。【考察】内腹斜筋のトレーニングによる即時効果として、トレーニング後の内腹斜筋と対側の内転筋に筋活動の増大が見られた。これらはLeeらのいう、骨盤帯の安定性に寄与する筋群とされるアウターユニットの「外側系」を構成する筋群であり、機能的な連結が考えられた。また筋活動の増加は、すでに荷重負荷の急激な増加が起こる接踵時より以前にみられており、負荷に対する予測的活動として増加したものと推測される。健常者に比べ腰痛患者では、上下肢の運動以前におこる体幹筋の予測的活動が少ないとする報告がある。今回の体幹筋のトレーニングにより股関節周囲筋にも変化が見られ、このことが姿勢の安定性に影響を与えていることが考える。
著者
福島 浩史 高橋 精一郎 宮原 寿明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.245-249, 2010 (Released:2010-05-27)
参考文献数
18
被引用文献数
4 1

〔目的〕人工膝関節置換術後の自動介助練習と他動練習の練習方法の違いが膝関節可動性と疼痛に及ぼす影響を評価すること。〔対象〕人工膝関節の機種,術者,術式が同一の関節リウマチ患者34名。〔方法〕被検者を無作為に自動介助群17名と他動群17名に分けて理学療法を提供した。理学療法の時間・回数・量は統一した。測定項目は他動屈曲角度,他動伸展角度,120度獲得日数,CPM日数,練習時疼痛とし,各々の群間あるいは群内比較を行った。〔結果〕群間比較は他動屈曲角度,120度獲得日数,CPM日数,練習時疼痛で有意差が認められた。群内比較は他動屈曲角度,他動伸展角度で有意差が認められた。全測定項目で自動介助群では他動群と比べて良好な改善傾向がみられた。〔結語〕自動介助練習は膝関節の可動性改善と練習時疼痛の軽減により効果的であるが,適用者には理学療法士の十分な説明と指導が必要である。可動域の改善と疼痛軽減が効果的に得られる練習方法と各々の練習方法については科学的根拠に裏づけされる必要がある。
著者
森下 志子 森下 一樹 森田 正治 宮崎 至恵 甲斐 悟 中原 雅美 渡利 一生 松崎 秀隆 吉本 龍司 村上 茂雄 千住 秀明 高橋 精一郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D1179-D1179, 2005

【はじめに】シャトルウォーキングテスト(SWT)は慢性呼吸不全患者(COPD)を対象に開発された運動負荷試験である。そのプロトコルは標準化されており,その結果から運動処方を具体的に行うことが可能であるという特徴がある。健常者に用いられる運動負荷試験として20mシャトルランニングテストがあるが,元来,スポーツ選手の全身持久力を評価するために開発されたため,最初のステージで,予測最大酸素摂取量が24.5 ml/kg/minと設定されており,運動負荷が大きいという問題点を抱えている。SWTはCOPDを対象に開発されたものであるため,プロトコルが緩やかであり,走行困難な者でも実施可能である。しかし,SWTでの運動負荷の予測式はCOPDを対象としたものであり,健常者には当てはまらない。そこで本研究では健常者を対象にSWT中の酸素摂取量を測定し,その結果から予測式を算出することを目的とした。<BR>【対象】長崎県I町在住で,町が主催する健康教室へ参加した整形外科的疾患のない25名を対象とした。年齢は26~78(平均54.17±17.76)歳,男性5名,女性20名であった。<BR>【方法】測定は,身長,体重,握力,SWT歩行距離および運動終了時の実測酸素摂取量(実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>)を実施した。SWTは標準プロトコルに従って測定し,酸素摂取量は携帯型呼気ガス分析装置(MetaMax2,CORTEX)を用い,ブレスバイブレス方式で記録した。呼気ガス分析より得られた実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離の関係を検討するために単回帰分析を用いて予測式を作成した。<BR>【結果】実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>とSWT歩行距離との関係は,実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>=0.030×SWT歩行距離+7.397(R<SUP>2</SUP>=0.841、p<0.01)となり,高い相関関係が認められた。実測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>の予測式を作成する上で,年齢その他の要因の関与は認めなかった。SWTプロトコルにおいて,上記予測式を基にした各レベルの予測peakV(dot)O<SUB>2</SUB>は,レベル1では7.697~8.297ml/kg/min,レベル2では8.597~9.497 ml/kg/minとなり,最高レベルであるレベル12では34.097~37.997 ml/kg/minと算出された。<BR>【考察】上記予測式の結果をMETsに換算すると,レベル1~12は2.1METs~10.9METsとなる。これをトレッドミルでの運動負荷試験として広く利用されているBruceプロトコルと比較すると,最大のレベルは3~4段階程度に相当する。Bruceプロトコルは,運動強度の増加が段階ごとに2~3METsと比較的大きく,日常的にトレーニングを行っていないものでも3段階までは到達可能である。今回の結果により,SWTでの運動負荷は,日常的にトレーニングを行っていない健常者に対する最適な運動負荷量を設定できるものと考える。
著者
永崎 孝之 岡田 裕隆 甲斐 悟 高橋 精一郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.867-871, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
2

〔目的〕吹矢トレーニングが呼吸機能に及ぼす影響を呼気筋トレーニングと比較して,検討することである。〔対象〕健常者19名。〔方法〕無作為に吹矢群10名と呼気筋トレーニング群(呼気筋群)9名の2群に分け,吹矢群には吹矢トレーニング,呼気筋群にはスレショルドPEPを用いた呼気抵抗負荷トレーニングを実施し,呼吸機能の肺活量,努力性肺活量,一秒量,一秒率,呼気最大流速(PEF),呼気最大口腔内圧(PEmax),吸気最大口腔内圧を測定し,各群内および群間で比較した〔結果〕吹矢群はPEF,PEmaxの数値が増加し統計学的有意差を認めた。その他の呼吸機能は差を認めなかった。呼気筋群はPEF,PEmaxの数値は増加したものの統計学的有意差を認めなかった。その他の呼吸機能についても差を認めなかった。また吹矢群と呼気筋群の呼吸機能の比較おいては統計学的有意差を認めなかった。〔結語〕吹矢トレーニングはPEF,PEmaxを増加させ,呼気筋トレーニングと同様の影響を呼吸機能に与えることが示唆された。