著者
上村 史朗 斎藤 能彦
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

慢性腎臓病(CKD)は心血管病(CVD)の独立した危険因子であるが、CVDの発症に係わる分子機序は明らかではなかった。本研究では動脈硬化進展作用を有する胎盤成長因子(PlGF)およびその内因性阻害因子である可溶性Fms-like tyrosine kinase 1; 可溶性FLT-1)に着目し、CKD患者における可溶性FLT-1関連分子の動態および動脈硬化病変の進展に寄与するメカニズムの解析を行なった。その結果, CKDの進展に伴う腎での可溶性FLT-1産生低下および血中可溶性FLT-1濃度の低下が, CKD患者における冠動脈病変の重症度を規定する重要な因子であることが判明した. さらにCKD合併動脈硬化マウスモデルを用いた実験により, リコンビナント可溶性FLT-1蛋白の持続投与が動脈硬化病変の進展を抑制することを明らかにし, 可溶性FLT-1が新しい創薬標的分子になる可能性を示した.