著者
佐藤 祥一郎 園田 和隆 吉村 壮平 宮﨑 雄一 松尾 龍 三浦 克之 今中 雄一 磯部 光章 斎藤 能彦 興梠 貴英 西村 邦宏 安田 聡 小川 久雄 北園 孝成 飯原 弘二 峰松 一夫 日本医療研究開発機構「脳卒中を含む循環器病の診療情報の収集のためのシステムの開発 に関する研究」班
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10587, (Released:2017-12-12)
参考文献数
57
被引用文献数
3

脳卒中に対する合理的,経済的な疾病対策を行うためには,悉皆性と信頼性を合わせ持つ国家的な脳卒中登録事業が不可欠である.わが国の診療実態に即した脳卒中登録システムに必要な条件を明らかにするため,システマティックレビューを行った.2015 年12 月31 日までに発行された,脳卒中登録研究に関する医学文献を,MEDLINE および医学中央雑誌上で検索し,1533 編の文献から,51 の登録研究(国外38,国内13)を抽出した.レビューの結果から,日本における質の高い脳卒中登録事業に必要な条件として,医療ID 導入による既存大規模データベースとの連携と,それを可能にする法整備,行政による公的事業資金,学会や患者支援団体,企業の支援による安定的な資金確保,情報公開の重要性が挙げられた.
著者
岩野 正之 斎藤 能彦 赤井 靖宏
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

われわれは、間質線維化の進展に尿細管上皮細胞のfibroblast specific protein 1(FSP1)陽性線維芽細胞への形質変異(EMT)が重要な役割を果たすことを明らかにしている。また一方では、慢性虚血による尿細管上皮細胞の低酸素暴露が間質線維化の進展に関与すると考えられている。本研究で、われわれは低酸素応答で中心的な役割を果たすことが知られているhypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)がEMTの協力な誘導因子であることを、初代近位尿細管上皮細胞を用いた実験系で明らかにし、HIF-1α阻害薬であるYC-1に初代近位尿細管上皮細胞におけるEMTの抑制効果があることを示した。また、Cre-loxPシステムを用いてHIF-1α遺伝子を尿細管上皮細胞特異的にターゲッティングした遺伝子改変マウスにおいては、一側尿管閉塞(UUO)マウスで誘導される間質線維化の進展が抑制されることを明らかにした。さらに、尿管に、連日30μ/g・mouseのYC-1を腹腔内投与することで、尿管閉塞後8日目のUUOマウスにおけるFSP1陽性細胞数は有意に現象し、タイプ1コラーゲン染色で評価した間質線維化面積も有意に減少することを示した。以上の結果より、慢性低酸素刺激で誘導された尿細管上皮細胞におけるHIF-1αの発現が、EMTによる間質線維化の進展に関与すること、およびHIF-1α阻害薬が間質線維化の新しい治療薬となる可能性が示された。
著者
上村 史朗 斎藤 能彦
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

慢性腎臓病(CKD)は心血管病(CVD)の独立した危険因子であるが、CVDの発症に係わる分子機序は明らかではなかった。本研究では動脈硬化進展作用を有する胎盤成長因子(PlGF)およびその内因性阻害因子である可溶性Fms-like tyrosine kinase 1; 可溶性FLT-1)に着目し、CKD患者における可溶性FLT-1関連分子の動態および動脈硬化病変の進展に寄与するメカニズムの解析を行なった。その結果, CKDの進展に伴う腎での可溶性FLT-1産生低下および血中可溶性FLT-1濃度の低下が, CKD患者における冠動脈病変の重症度を規定する重要な因子であることが判明した. さらにCKD合併動脈硬化マウスモデルを用いた実験により, リコンビナント可溶性FLT-1蛋白の持続投与が動脈硬化病変の進展を抑制することを明らかにし, 可溶性FLT-1が新しい創薬標的分子になる可能性を示した.