著者
高野 慎太郎 津山 直樹 成田 喜一郎 上條 由貴
出版者
学校法人 自由学園最高学部
雑誌
生活大学研究 (ISSN:21896933)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.82-101, 2022-05-07 (Released:2022-05-07)
参考文献数
21

本研究では、アクティブ・ラーニングの再検討に向けて、人間史学習を中核とした教科横断型実践のカリキュラムの創発過程について、学習指導案や授業資料などのドキュメントデータから明らかにした。これによって、授業方法論の開発者が現場の実践から影響を受け、方法論の問い直しや定義の更新を生じ、それが再び現場の実践にフィードバックされる過程を確認することができた。加えて、創発された教科横断型実践の実態についても、これまでになされてきた教科横断型実践との差異を明記しながら、可能な限りのドキュメントデータの提示とその詳述を行った。これによって、実践者同士が「観」を語り合い、ボトムアップで共通の学習テーマを設定し、「社会不安」という教科間の接点を見出しながらカリキュラム創発がなされている点が明らかとなった。こうした記述を通した全体からは、実践研究の水準においては、実践者と方法論の開発者における相互作用的なカリキュラム創発の過程が示され、また、授業実践の水準においては、アクティブ・ラーニングの諸課題を克服する実践の方向性が示されている。