- 著者
-
國吉 幸男
新垣 勝也
宮城 和史
山城 聡
上江洲 徹
- 出版者
- 琉球大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2003
【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。各点で1)腸管内へラテックス製バルーン付き圧transducerを用いて、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観察した。2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し誘発電位検査装置(日本光電MEB-7202)を用いて腸管筋電図測定を行った。3)ニードルタイプ酸素電極を小腸漿膜面腸管壁内へ刺入し酸素分圧測定装置(Inter Medical PO_2-100)を用いて組織内酸素分圧を測定した。以上についてControlを測定後、Cranial mesenteric arteryを閉塞し一定時間(1時間、6時間、12時間)後、再灌流を行った後上記を測定した。【結果】1時間動脈閉塞では再灌流により速やかに腸管のcyanosisは消失し、10〜12回/分頻度の腸管収縮運動とそれに伴う腸管筋電図の現出を認めた。組織内酸素分圧はControl値(35〜40mmHg)に復した。6時間動脈閉塞後再灌流では腸管のcyanosisは全体的に消失したが、30〜40%程度の領域が壊死に陥った。壊死部以外では腸管運動、腸管電気的活動の回復を認めた。組織内酸素分圧も30〜35mmHgに復した。組織学的には絨毛の脱落を認めたが一部では陰窩は保たれていた。一方、12時間動脈閉塞では、再灌流後も腸管運動を示す所見は認められず、組織内酸素分圧は0mmHgのままであった。組織学的には腸管壁全体の出血性梗塞を認めた。【まとめ】1.12時間動脈閉塞では小腸全体が出血性壊死に陥り腸管運動は認められなかった。2.6時間動脈閉塞では一部は壊死に陥ったが、陰窩層が保たれている所見が認められた。3.腸管のviabilityを左右するturning pointは動脈閉塞時間6時間前後にあることが示唆された。4.動脈閉塞時間6時間においても斑状に壊死に陥った個体や小腸の中間点のみ壊死に陥った個体など所見に差があり部位に関しては一定の傾向を認めなかった。5.今回、測定した3項目に関しては組織所見との明らかな相関は見られなかった。今後、例数を増やし再実験するとともに、新たなモニター項目の追加や実験方法の検討が必要と思われた。