著者
安藤 美月 喜瀬 勇也 前田 達也 稲福 斉 山城 聡 國吉 幸男
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.245-249, 2019
被引用文献数
2

<p>原発性心臓腫瘍は稀な疾患であり,その発症率は剖検例の0.0017~0.33%とされているが,心臓超音波検査の進歩および普及による診断学の発展に伴い,その診断率は年々上昇している.乳頭状線維弾性腫は粘液腫についで多い心臓原発性良性腫瘍で,多くは大動脈弁および僧帽弁に単発で生じることが多い無血管性乳頭腫であり,4弁すべてに発生した症例報告はない.今回われわれは意識消失を契機に発見された,若年女性の4弁すべてに発生した乳頭状線維弾性腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.</p>
著者
佐々木 高信 稲福 斉 照屋 孝夫 國吉 幸男
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.31, no.7, pp.911-915, 2017

<p>抗凝固療法中にもかかわらず,左下葉切除後に肺静脈断端から左房内に無症候性に広範な血栓を形成した症例を報告する.患者は67歳,女性.弁膜症術後にてwarfarin内服あり.子宮頸癌と肺癌の重複癌にて当院へ紹介された.進行度を考慮し,肺癌手術を先行した.胸腔鏡補助下左下葉切除(ND2a-2)を施行(pT1bN2M0),術後特に合併症を認めず退院となった.子宮頸癌治療開始前の胸腹部造影CTにて左下肺静脈断端から左房内に広範な血栓を認めた(塞栓症状は伴わず).直ちにheparinの持続静注を開始し,以降徐々に血栓の溶解をみた.左上葉切除後の上肺静脈断端の血栓形成については広く知られるところであるが,下葉切除後の広範な血栓形成は国内・国外問わず報告は少ない.非常に稀と考え,報告する.</p>
著者
長嵜 悦子 佐久田 斉 仲栄真 盛保 比嘉 昇 國吉 幸男 古謝 景春
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.2913-2917, 2003-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

肺塞栓症の塞栓源として下肢深部静脈血栓症が知られている.肺塞栓症を合併した孤立性ヒラメ筋静脈血栓症の3症例を経験したので報告する.症例1: 59歳,女性. Cushing syndromeに対する腹腔鏡下副腎摘出術後3日目に胸部圧迫感,低酸素血症が出現.症例2: 54歳,女性.卵巣癌の既往があり1カ月前より左下腿鈍痛が出現.症例3: 44歳,女性.両下腿に腫脹,鈍痛があり,階段昇降時に息切れを自覚.いずれも下肢超音波検査でヒラメ筋静脈のみに限局した血栓,肺血流シンチで肺血流欠損像,胸部造影CT検査で多発性肺動脈血栓を認めた. 3例中1例にウロキナーゼによる血栓溶解療法,全例に抗凝固療法を行い症状の改善が得られた.ヒラメ筋静脈血栓症は臨床症状が乏しいため見落とされやすい.しかし肺塞栓症の合併,血栓の中枢側進展,再発を繰り返すことがあり,積極的に診断,治療,予防する必要がある.
著者
國吉 幸男 新垣 勝也 宮城 和史 山城 聡 上江洲 徹
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。各点で1)腸管内へラテックス製バルーン付き圧transducerを用いて、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観察した。2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し誘発電位検査装置(日本光電MEB-7202)を用いて腸管筋電図測定を行った。3)ニードルタイプ酸素電極を小腸漿膜面腸管壁内へ刺入し酸素分圧測定装置(Inter Medical PO_2-100)を用いて組織内酸素分圧を測定した。以上についてControlを測定後、Cranial mesenteric arteryを閉塞し一定時間(1時間、6時間、12時間)後、再灌流を行った後上記を測定した。【結果】1時間動脈閉塞では再灌流により速やかに腸管のcyanosisは消失し、10〜12回/分頻度の腸管収縮運動とそれに伴う腸管筋電図の現出を認めた。組織内酸素分圧はControl値(35〜40mmHg)に復した。6時間動脈閉塞後再灌流では腸管のcyanosisは全体的に消失したが、30〜40%程度の領域が壊死に陥った。壊死部以外では腸管運動、腸管電気的活動の回復を認めた。組織内酸素分圧も30〜35mmHgに復した。組織学的には絨毛の脱落を認めたが一部では陰窩は保たれていた。一方、12時間動脈閉塞では、再灌流後も腸管運動を示す所見は認められず、組織内酸素分圧は0mmHgのままであった。組織学的には腸管壁全体の出血性梗塞を認めた。【まとめ】1.12時間動脈閉塞では小腸全体が出血性壊死に陥り腸管運動は認められなかった。2.6時間動脈閉塞では一部は壊死に陥ったが、陰窩層が保たれている所見が認められた。3.腸管のviabilityを左右するturning pointは動脈閉塞時間6時間前後にあることが示唆された。4.動脈閉塞時間6時間においても斑状に壊死に陥った個体や小腸の中間点のみ壊死に陥った個体など所見に差があり部位に関しては一定の傾向を認めなかった。5.今回、測定した3項目に関しては組織所見との明らかな相関は見られなかった。今後、例数を増やし再実験するとともに、新たなモニター項目の追加や実験方法の検討が必要と思われた。