著者
井上 芳光 近藤 徳彦 上田 博之 石指 宏通 近江 雅人 古賀 俊策
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

発汗能力は,思春期前では性差はみられず,思春期以降に男女とも増大するものの,その程度は女性が男性よりも小さかったため,若年者では女性が男性より低かった.発汗能力は男女とも加齢に伴い低下し,その性差は80 歳代で消失する傾向だった.若年者では短期間の運動トレーニング・暑熱順化に伴う発汗能力の改善の程度にも性差(男>女)がみられた.長期間運動トレーニングに伴う発汗能力の改善は,子供や高齢者が若年者より小さかった.女性の少ない発汗量は,体液の損失を最小限に抑えようとする生物学的意義が窺えた.なお,男性の運動トレーニング・暑熱馴化・加齢による発汗能力の変化は性ホルモン・成長ホルモンとは関連しなかった.
著者
井上 芳光 古賀 俊策 近藤 徳彦 上田 博之 石指 宏通 芝崎 学 近江 雅人
出版者
大阪国際大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ヒトの環境適応能の老化機序を解明するため,全身協関的視点から検討した結果,以下のことが示された.体温調節機序は男女とも,入力系→効果器系→出力系→中枢系の順序で老化し,下肢の汗腺機能は下腿が大腿より,下肢の後面が前面より早期に老化する.老化に伴い非温熱性要因の複合的入力に対する反応が小さくなる.若年者でみられた熱放散反応の性差は老化によって小さくなる.高齢者の汗腺機能の夏へ向けての亢進が若年者より遅延し,また,暑熱下の起立耐性に影響する皮膚血流量調節の関与は高齢者では小さく,夏季における高齢者の血栓形成は若年者より促進される.体温調節機序の入力系や出力系に対して老化遅延策は見出せなかったが,効果器系では運動習慣の確立が有効である.