著者
上田中 徹
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.342, 2016 (Released:2016-04-01)
参考文献数
3

硫黄やリン,ヨウ素は容易に超原子価状態を形成することが知られている.なかでも超原子価ヨウ素は幅広く研究されており,シアノ化やアルキニル化,アリール化などに用いる求電子的官能基化剤として用いられている.一方で,超原子価硫黄化合物を基盤とした求電子的官能基化剤はこれまでほとんど報告がなく,未開拓分野であった.このような背景下,Alcarazoらは,超原子価ヨウ素反応剤と同じT字構造を有する超原子価硫黄化合物ジハロイミダゾリウムスルフランに着目し(図1(I)),新規求電子的官能基化剤の開発に成功したので,以下に紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Zhdankin V. V., Stang P. J., Chem. Rev., 108, 5299-5358 (2008).2) Arduengo A. J., Burgess E. M., J. Am. Chem. Soc., 99, 2376-2378 (1977).3) Talavera G. et al., J. Am. Chem. Soc., 137, 8704-8707 (2015).