著者
上町 達也
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,日本の豊富なアジサイ遺伝資源を利用して環境耐性をもつ園芸品種を育成するために,これらの系統学的な解析を行うとともに,強光耐性並びに乾燥耐性を持つ育種素材の探索を行った.①ガクアジサイとエゾアジサイの分布境界域が,頸城山塊であること,②伊豆半島ではガクアジサイとヤマアジサイの自然交雑が生じていること,③アジサイ園芸品種の中にはガクアジサイとエゾアジサイの種間交雑品種が多く含まれること,④八丈島と青ヶ島のガクアジサイ野生系統において乾燥耐性が認められること,⑥強光障害には2タイプあり,いくつかの耐性系統が認められること,が明らかとなった.
著者
上町 達也
出版者
滋賀県立短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本実験では,アジサイのがく片の弁化の機構を解明することを目的として,アジサイの花序形成及び小花の発達過程について調査を行った.花序形成初期の花序原基は1つの原基が3つの原基に分裂して発達しているように見えた.しかし花序形成の後半になるにつれ,花序は1つの原基の基部に新たな原基が腋芽的に形成される,いわゆる岐散型の発達の様相を示した.開花調査と照らし合わせると,アジサイの花序はいくつかの岐散型の花序が集まった複集散型の花序であると考えられた.手鞠咲きアジサイでは,両性花の花軸に4〜6個の装飾花が着生するが,装飾花の花軸には側花蕾は着生しなかった.装飾花は両性花に比べて発達が遅かった.両性花の原基は花軸に側花蕾が着生した後にがく片の形成を始めたが,装飾花の原基は側花蕾を形成せずにがく片を形成した.装飾花の着生位置に花序が着生する場合があるが,その花序の中心の小花では,がく片の一部が弁化した,両性花と装飾花の中間型を示すものが多くみられた.またこの小花の花軸には1〜2個の装飾花が着生していた.額咲きアジサイでは,いずれの両性花においても花軸に側花序,あるいは側花蕾が着生していた.最も開花が遅く,形成された時期が遅かったと思われる両性花においても,その花軸には未熟な側花蕾が着生していた.額咲きアジサイでは,装飾花よりも発達時期の遅い両性花がいくつかみられた.これらの結果から,アジサイにおいて小花のがく片の弁化は,その小花の形成・発達時期よりもむしろ側花蕾形成と何らかの因果関係を持つことが示唆された.小花分化期に加温処理を行ったところ,額咲きの'紅ヤマアジサイ'及び額咲きで八重咲きの'隅田の花火'において,がく片の弁化した小花の割合が増加した.植物生長調節物質ががく片の弁化に及ぼす影響については現在調査中である.