著者
上谷 芳昭 外山 義 三浦 研 外山 義
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、新設および既存のユニット改修の事例を取り上げ、以下を明らかにした。入居者、職員、敷地が同一のまま、六床室を主体とする従来型の特別養護老人ホームから、全室個室のユニットケアへ建替えられた特別養護老人ホームJ苑の建替え事例を取り上げ、全室個室ユニットケアを導入した場合、入居者のQOLがどのように変化するのか、また職員の介護負荷が増加するのか、時系列的な非参与行動観察調査を行い、1)全室個室としても入居者のリビング滞在率が向上することで、個室化が直接引きこもりに結びつかないこと、2)トイレが分散配置された結果、排泄の自立度が向上するケースが見られるなど、ADLの改善に寄与すること、3)職員の介護時における身体活動量を時系列的に調べた結果、ユニット化により一時的に介護職員の身体活動量は大幅に増加するが、建て替え後5ヶ月で建て替え前に近い水準に近づくこと、4)重度の高齢者を想定したユニットの空間構成を検討する際には、いたずらに多様なセミプライベートおよびセミパブリックな空間を設けず、むしろコンパクトな移動動線計画を念頭に置くことの重要性、また、5)既存の特別養護老人ホームにユニットケアを取り入れた施設を対象とした調査からは、ユニットケアに伴う事務およびミーティング方式の見直しが介護職員のユニット滞在時間を増やし、その結果、入居者と関わる時間が増加することが示された。