- 著者
-
上野 圭吾
- 出版者
- 国立感染症研究所
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2017-04-01
病原性真菌<i>Cryptococcus gattii</i>は、健常人に感染し予後不良なクリプトコックス症を引き起こす。申請者は、本感染症の予後を改善する樹状細胞 (DC)ワクチンを開発し、その作用機構を解析している。昨年度は、DCワクチンが肺常在性記憶型Th17細胞 (lung TRM17)を誘導することや、lung TRM17の分化維持機構に必要な因子について、国際誌に報告した (Ueno et al., Mucosal Immunol, 2019)。lung TRM17の誘導前期 (ワクチン後2週目) と誘導後期 (ワクチン後15週目)について、IL-17A欠損マウスでの挙動を評価したところ、IL-17A欠損マウスではどちらの時期もlung TRM17の数は有意に少なかった。特に、誘導後期のIL-17A欠損マウスでは、lung TRM17に発現するCD127の発現量が有意に低下し、lung TRM17の数はワクチン非投与群の場合と同等であった。このことは、IL-17Aがlung TRM17の発達や維持に関与することを示唆している。その他、DCワクチンを事前にMHC-II阻害抗体で処理するとlung TRM17の発達が阻害されたことから、DCワクチンによる抗原提示活性がlung TRM17の発達に必要であることも明らかになった。上記の論文では、lung TRM17が好中球の活性化を介して本感染症を制御するモデルを示した。その後の研究では好中球の殺菌機構や分化制御機構についても国際誌に報告した (Ueno et al., Med Mycol, 2019: Sci Rep, 2018)。初年度で開発した新規経鼻 (IN) ワクチンについて、DCワクチン同様に感染予後を改善することが明らかになった (上野ら, 第62回 日本医真菌学会総会, 2018年)。