著者
井上 貴博 上野 将紀
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.30-39, 2023-03-25 (Released:2023-04-25)
参考文献数
41

皮質脊髄路は随意運動の制御に重要な役割を果たしており,脳卒中や脊髄損傷などで損傷を受けると重篤な運動障害が引き起こされる.一方で,脳や脊髄には可塑性があり,失われた機能は時間を経て回復あるいは増悪するなどしばしば変容することが知られる.近年の研究成果から,こうした機能の変容は,障害をのがれた回路網の代償的なはたらきや再編に起因することが明らかとなりつつある.本総説では,げっ歯類の基礎研究から明らかになってきた皮質脊髄路の構造や機能,障害パターンに応じた再編様式について概説し,中枢神経障害後の回路再編と機能回復を促進しうる有望な治療アプローチと今後の課題について述べていく.