- 著者
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下坂 守
- 出版者
- 奈良大学史学会
- 雑誌
- 奈良史学 (ISSN:02894874)
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.1-20, 1993-12
本稿の目的は、中世、山門公人と呼ばれた人々が、延暦寺の寺内においてどのような位置を占めていたかを考察することにある。山門公人に関しては、しばしば延暦寺領の年貢謎責にあたっていたことや、彼らが延暦寺衆徒の示威行動の先頭に立っていたことなどから、その活発な活動状況についてはよく知られている。しかし、そのいっぽうで彼らが延暦寺内において具体的にどのような存在であったに関しては、正面からこれを取り上げて論じたものがまったくないのが現状である。これは一つには延暦寺内における山門公人の位置付けが、史料的な制約もあって、容易に明確にし得ないことによるところが大きいが、延暦寺内における「公的」権力のあり方、ひいては大寺院における「公的」なるもののあり方を考える上において、その歴史的な評価は不可避のものと考える。