著者
下妻 陽介 下塩 義文 秋山 佳春 桑原 伸夫
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.585-593, 2006-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

電力線搬送通信(PLC)は家庭内の配電線を通信線としても利用するため,新たに通信線を配線する必要がないといった利点があるが,通信目的として設計されていない電力線を使用するため,他の通信-の影響を検討する必要がある.通信に影響を及ぼす経路としては放射,伝導,誘導によるものが考えられるが,本論文では,通信線に誘導したPLC信号が同じ周波数帯域を使用するVDSL通信へ与える影響について検討を行った.まず,電力線から通信線に誘導する電圧を,2対の平衡ケーブルの4導体とグラウンドを考慮した5導体からなる8ポート回路網モデルにより解析を行った.この解析モデルにより,伝送系の平衡度を変化させたときの近端クロストーク(VTR)を求め測定値と比較した結果,両者の傾向はほほ-敦し,解析によりVTRの評価が可能であることが分かった.次に,誘導したPLC信号がVDSL通信に与える影響を,スループットの劣化を尺度として評価を行った.その結果,通常の条件下においては影響がないこと,vTRの解析値,PLC及びADSLモデムの入出力信号レベル,干渉が発生するDU比(通信信号と妨害波の比)が既知であれば,干渉の発生をある程度予測することが可能であることが分かった.