著者
茅野 功 薮本 道人 望月 精一 宮崎 仁
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.3, pp.576-585, 2009-03-01
参考文献数
28

ぱちんこ遊技場は複数の電子機器に四面を取り囲まれる特殊な環境であり,老若男女を問わず多くの人が出入りする場所である.しかし,このような電磁環境における生体及び体内埋込形医療機器への影響に対する研究はなされていない.そこで本論文では,この基礎的検討としてぱちんこ遊技場の遊技機のうち回胴式遊技機に焦点を当て,4種の遊技機から放射される中間周波磁界及び高周波電界の測定を行い,遊技者の磁界及び電界曝露の程度を検討した.この結果,回胴式遊技機は遊技中の役物連続作動装置(いわゆるボーナスゲーム)動作中に中間周波磁界及び高周波電界を最も強く放射しており,このとき遊技者は電磁調理器前面30cmにおける約5分の1に相当する中間周波磁界と,VCCIクラスB許容値より最大6.3倍の高周波電界が曝露されるが,ICNIRPの定める電界及び磁界への公衆の曝露に関する参考レべル及び医用電子機器の電磁両立性規格IEC60601-1-2に対して十分低値であることを確認している.
著者
宇野 由美子 齊藤 一幸 高橋 応明 伊藤 公一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.278-285, 2010-02-01
参考文献数
16
被引用文献数
2

人体近傍で用いられる機器のアンテナの設計では,人体との相互作用を考慮することが重要であり,その影響を評価する際には,人体の組織構造を簡易化した均質ファントムを用いた検討が一般的である.しかしながら,均質なモデルを用いることの妥当性の検討例は少ない.本論文では,2〜10GHzにおける人体の組織構造がアンテナ特性に与える影響の基礎的な検討として,均質媒質モデルと人体の組織構造を考慮した層構造モデルの近傍に半波長ダイポールアンテナを配置し,それらの人体構造の差異がアンテナ特性に与える影響について定量的に評価した.また,実験により数値計算の妥当性を確認するために,広帯域層構造ファントムの開発を行った.その結果,アンテナをファントムから0.3λ以上に配置した際の両モデル間の入力特性,放射指向性,放射効率の差異は小さいことを確認した.しかしながら,アンテナとファントム間の距離が0.1λの場合の両モデル間の差異は,VSWRは0.1以上,放射効率は15%以上あるなど,アンテナ特性の差異が大きいことを確認した.
著者
中村 直義 倉掛 卓也 小山田 公之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.1014-1018, 2006-06-01

OFDM信号の三次の相互変調ひずみ(Composite Triple Beat)妨害を受けるQAM信号のBER特性の近似式を解析的に導出した.実験によりケーブルテレビ用64QAM信号のCIR対BER特性を測定し,三次ひずみ妨害は電力の等しい熱雑音と比べてBER特性を著しく劣化させることを明らかにした.
著者
下妻 陽介 下塩 義文 秋山 佳春 桑原 伸夫
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.585-593, 2006-04-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

電力線搬送通信(PLC)は家庭内の配電線を通信線としても利用するため,新たに通信線を配線する必要がないといった利点があるが,通信目的として設計されていない電力線を使用するため,他の通信-の影響を検討する必要がある.通信に影響を及ぼす経路としては放射,伝導,誘導によるものが考えられるが,本論文では,通信線に誘導したPLC信号が同じ周波数帯域を使用するVDSL通信へ与える影響について検討を行った.まず,電力線から通信線に誘導する電圧を,2対の平衡ケーブルの4導体とグラウンドを考慮した5導体からなる8ポート回路網モデルにより解析を行った.この解析モデルにより,伝送系の平衡度を変化させたときの近端クロストーク(VTR)を求め測定値と比較した結果,両者の傾向はほほ-敦し,解析によりVTRの評価が可能であることが分かった.次に,誘導したPLC信号がVDSL通信に与える影響を,スループットの劣化を尺度として評価を行った.その結果,通常の条件下においては影響がないこと,vTRの解析値,PLC及びADSLモデムの入出力信号レベル,干渉が発生するDU比(通信信号と妨害波の比)が既知であれば,干渉の発生をある程度予測することが可能であることが分かった.
著者
福田 明 椋本 介士 大市 聡 中野 啓 吉廣 安昭 長澤 正氏 山岸 久雄 佐藤 夏雄 楊 恵根 何 国経 金 力軍
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.90, no.2, pp.199-207, 2007-02-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

本論文では,筆者らが2001年末より2004年末まで,ほぼ3年間にわたって南極大陸で実施した流星バースト通信実験のうち,最終年度(第45次南極地域観測隊)において行ったデータ伝送実験の概要とその実験結果を報告する.実験は,昭和基地(マスタ局)-中山基地(リモート局)間約1400kmで行われ,筆者らが開発した,ソフトウェアモデムによる流星バースト通信システムRANDOMが用いられた.期間を通しての平均スループットは,流星バーストによる伝搬が主である昼間には約1.7 bit/s, オーロラに関係すると思われる非流星伝搬がしばしば発生する夜間には約6.8bit/sであり,全休では約3.4bit/sであった.このように,本システムのデータ伝送能力は,それまでの2年間のデータ伝送実験に用いた米国MCC社製のシステムに比べて非常に高く,この1対1通信路を通して1日当り30キロバイト以上の観測データを伝送できることが分かった.
著者
田中 晢男 中野 敬介 仙石 正和 篠田 庄司
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2063-2072, 2002-12-01
参考文献数
9
被引用文献数
5

セルラ方式ではすべての通信が基地局を介して行われるが,端末が建物の陰のなどのデッドスポットに入った場合,基地局と通信することができなくなることがある.本論文では,このような場合に,別の端末がデッドスポットに入った端末と基地局との間の通信を中継するアドホックリレー方式を検討し,その通信トラヒック特性を表す理論式を導く.この理論式の計算例から,端末の通信能力が比較的小さな場合でも,アドホックな中継により呼損率が改善され,運ばれる呼量も改善できることを示す.また,シミュレーションにより中継が二段だけで十分な場合があることを示す.これは上記理論式により多段中継の場合の通信トラヒック特性を推定できることを意味すると考えられる.
著者
小倉 毅 川野 哲生 清水 健司 丸山 充 高橋 直久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.1533-1543, 2003-08-01
参考文献数
21

本論文では,筆者らが提案するリンクレイヤプロトコルMAPOSに準拠した高速スイッチ COREswitchについて述べる.COREswitchは,OC-3c (155 Mbps),OC-12c (622 Mbps),OC-48c (2.4 Gbps)の3種類の回線を最大16回線まで混在して収容でき,87.04 Gbpsの内部転送容量をもつ.高速ストリーム処理向きのデータパスや高効率の可変長フレーム転送アービタ等により,ハードウェアの簡略化による開発期間の短縮と高速性を両立した.想定する主なアプリケーションとして,広帯域映像IP転送システム及びインターネットバックボーンスイッチを取り上げ,それぞれの性能評価を行った.その結果,広帯域映像IP転送システムとして約1.5 Gbpsの映像業界向け非圧縮HDTV映像をスイッチングするのに十分な性能をもつことを明らかにした.また,インターネットバックボーンスイッチの構成の一例として,14本のOC-12c回線,2本のOC-48c回線の構成を用いて,同時競合転送試験を行った結果,フレームサイズが512 byte以上であればワイヤレートのスイッチングが達成できることを明らかにした.
著者
佐藤 健一
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.220-232, 2013-03-01
参考文献数
63

インターネットのトラヒック量が増加するとともに,ハイパージャイアントコンテンツホルダの出現により,ネットワークのトラヒックの流れが大きく変わりつつある.一方,半導体の性能の進展速度が低下するとともに,消費電力のボトルネックが顕在化しつつある.将来の大容量トラヒックを扱うためには,スループット当りの消費電力が極めて小さい光ルーチング技術の重要性が増加する.しかしながら光の特性を最大限に生かしたネットワークの実現にはノード技術の革新が必要である.今後の光ネットワーク技術の開発方向を議論する.Relentless Internet traffic increase and the recent advent of hyper giant content holders are changing traditional Internet paradigm. Limitation of silicon-based technologies is becoming more and more tangible, which stems from ever increasing LSI power dissipation. Exploiting optical technologies is the way to resolve the problems, however, their introduction remains limited. The barriers mostly exist in the node technologies. The next steps to proceed in removing them are presented with some state-of-the-art technical development.
著者
藤原 明広 巳波 弘佳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.580-588, 2013-06-01
参考文献数
11

大規模災害が都市部に起こり,通信サービスが機能不全に陥った場合を想定し,災害耐性のあるネットワークシステムの一例として,すれちがい通信を利用した災害時避難誘導を提案する.この避難誘導では,避難者が避難所へ避難中に被災地の情報(被災による通行不能箇所や危険地帯)を携帯電話を用いて収集し,出会った被災者同士で情報共有を行う.我々は本提案を数値シミュレーションにより評価し,避難時間が避難者の渋滞の有無にかかわらず,大幅に短縮できることを確認した.
著者
安藤 恵 川原崎 雅敏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.1614-1625, 2010-12-01
参考文献数
9
被引用文献数
1

災害発生時には電話はライフラインとなるものであるが,発着信規制によってほとんど使えなくなるのが現状である.災害用伝言板や災害用伝言ダイヤルといった蓄積型サービスも提供されているが,電話,特に携帯電話のニーズは大きいと想定される.本論文では,第3.9世代携帯電話システム(LTE)を対象に,大規模災害に伴う着信過負荷時にも電話の疎通率を維持する過負荷制御方式の提案と評価を行う.LTEでは,電話トラヒックはIP化され,呼制御はSIPサーバで行われる.また,無線帯域も大容量化される.シミュレーションによりLTEの過負荷特性とふくそうメカニズムを解明し,その結果に基づいて提案する制御方式により,システムの性能低下要因となる無効処理が軽減され,過負荷時にも高スループットを維持できることを示す.
著者
新井 宏之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1140-1148, 2004-09-01
被引用文献数
13

本論文では小形アンテナに提案されてきた手法が,整合回路の付加,電流経路の変更,誘電体・磁性体の利用の三つに大別できることを,統計的なデータをもとに明らかにし,その詳細について解説し,提案されている小形化の指標について議論し具体例で評価を試みる.また,小形アンテナを評価する手法として用いられている下限Q値について解説し,微小ダイポールから導出される値が実際のアンテナのものに近いことを示す.また,小形アンテナの重要な測定法,特に放射効率についてその現状と問題点を明らかにする.
著者
会田 雅樹 高野 知佐 小頭 秀行 中村 元
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.93, no.10, pp.1430-1444, 2010-10-01
被引用文献数
1

通信ネットワークに関する各種データ(トラヒック量,ユーザ数等)には,何らかの形で人間社会の活動の特性が反映されていると考えることができる.我々はこれまで,情報通信サービスのデータに現れるべき乗則を利用して,人間の情報交換関係に関する社会ネットワークの構造を調べてきた.結果として得られた社会ネットワークの構造は,分析のもとになった特定の情報通信サービスのデータに関する表面的なサービス種別に左右されるものではなく,背後にある普遍的な社会ネットワーク構造を記述していることが望ましい.これを確認するためには,特定のデータ分析から得られる社会ネットワーク構造の分析結果を,他の通信サービスのデータによって検証することが有効であると考えられる.本論文では,複数の情報通信サービスのデータを相補的に用いて,データの自己無撞着性から許される社会ネットワークの構造やユーザ行動特性の分析を行う.また,得られた次数分布特性が現実のデータとよく一致することを確認する.
著者
向井 務 村田 英一 吉田 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2080-2086, 2002-12-01
被引用文献数
25

近年,ユニバーサルアドホックネットワークや,無線アドホックネットワークとして研究されているマルチホップ自律分散無線ネットワークは,インフラを必要とせず自律的にネットワークを形成する技術である.マルチホップ無線ネットワークでは端末間で通信を行うため,送受信端末間の通信距離を短くすることが可能である.そのため,端末が自律的に適切な中継端末と通信チャネルを選択することができれば,周波数繰返し距離が短くなるため周波数利用効率が高いシステムとなりうる.本論文では多数の端末が存在する環境を仮定し,チャネル選択アルゴリズムの提案を行い,マルチホップ無線ネットワークの周波数利用効率と送信電力の検討が行われている.その結果,簡易に算出したセルラネットワークの周波数利用効率,総送信電力特性との比較では大幅な劣化は見られず,マルチホップ自律分散ネットワークの可能性が示されている.