- 著者
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下家 由起子
- 出版者
- 山野美容芸術短期大学
- 雑誌
- 山野研究紀要 (ISSN:09196323)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.65-74, 2007-03-20
江戸時代以来の伝統を、競技そのものにとどまらず風俗、習慣にまで色濃く留めている大相撲は、日本文化の面でも大いに魅力的な存在である。しかし時代も大きく変わり、若返りを繰り返してきた力士の生活環境、行動まで昔のままとは当然考えられない。彼らとて一般庶民と同じように現代人であるからである。力士たちが頭にのせているマゲに合わせて、着物で公式の場に登場しているのはよく知られているが、その日常生活における着衣は、和服一辺倒とは言い切れないものがある。本稿はそんな現代力士の「衣」に注目して、下着から着物まで調査と分析を試みる。そして相撲界における衣生活の歴史と礼法の基本を検証することで、最近乱れがちと識者より指摘を受けている彼らの「着装」に警鐘を鳴らすと同時に、将来も和服とともに生きていくであろう大相撲力士による正しい伝統の継承に大きな期待を託し、その今後に注目していこうとするものである。