著者
李 漢洙 下山 智久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_325-I_330, 2016

瀬戸内海は,潮汐と潮流の影響が卓越した沿岸環境を有している.本研究は,南海トラフで想定される最大クラスの巨大地震によって発生しうる津波を対象として,適合格子細分化を採用した数値実験により,瀬戸内海における潮汐が津波伝播に及ぼす影響について定量的評価を行った.特に,瀬戸内海における津波伝播過程において,速吸瀬戸を基準とする潮汐の位相差(上げ潮・満潮・下げ潮・干潮)を考慮し,潮汐と津波の物理的相互作用を考慮した数値計算を行った.その結果,瀬戸内海で最も潮汐が大きい周防灘において,潮汐位相別の津波高に最大50cm,到達時間に最大約1時間の差が認められた.さらに,計算最大津波高における潮汐位相別津波高の差の比率を不確実性と定義して評価した結果,播磨灘において,最大50%を超える計算津波高における不確実性が認められた.