著者
中村 光江 下山 節子 阿部 オリエ
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
no.5, pp.71-77, 2006

ストラウスとコービンは、慢性疾患を持つ人々に関する数多くの事例を基に「慢性疾患の病みの軌跡」という概念モデルを提示した。慢性の病いを持つ人間の反応を一つの「行路」と捉え、病気や慢性状況の行路を「軌跡」とした。この概念枠組みは、慢性の病気を持って生きることに対しての洞察や知識を提供するため、多くの看護実践・教育・研究・政策決定への活用が期待される。そのため、その発展の経緯を理解し、どの程度検証され、有用性や信頼性が確認されているかを明確にすることを目的に、文献研究を実施中である。今回、第一報として国内文献を検討した結果を報告する。「病みの軌跡」をキーワードとして収集した24 件の文献中、解説11 件、学会抄録7件、研究論文・報告6 件であった。比較的新しい枠組みとして活用され始めた段階にあり、大半は看護実践の事例検討において対象者理解や看護の振り返りの視点として使用されていた。「局面」等の下位概念はあまり使用されておらず、軌跡の枠組みを哲学的基盤や理論的前提とするにとどまっていた。国内文献では検証はなされておらず、モデルの発展には至っていないと考えられた。
著者
下山 節子 水町 淑美 平川 オリエ 田中 利恵
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.159-167, 2005-03-01

腹膜透析および血液透析者の家族が抱える健康問題を比較し、透析者家族のQOL向上を目指した看護援助の課題を明らかにすることを目的として研究を行った。対象は、腹膜透析者の家族22名と血液透析者の家族43名。健康関連QOL尺度SF-36日本語版1.2による質問紙調査を実施した。調査期間は、2002年3月(腹膜透析者の家族)と2003年9月(血液透析者の家族)であった。腹膜透析の家族と血液透析者の家族のQOLを比較した結果、腹膜透析者の家族は、精神的負担感が強いことが明らかとなった。特に、精神的健康感が低かったのは、腹膜透析者の家族の年齢60歳以上、女性、家族自身が病気をもっている、透析歴5年未満の家族であった。週3回外来通院する血液透析とは異なり、腹膜透析が在宅療養であることも家族の精神的負担を強くしていると考えられる。腹膜透析者の家族がもつ精神的健康問題については、家族に対するカウンセリングや家庭訪問など積極的な介入の必要性が示唆された。