5 0 0 0 OA 腹部銃創の1例

著者
小松 周平 下松谷 匠 小渕 岳恒
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.975-978, 2004-07-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1

欧米に比べ銃所有に対する規制が厳しく銃創の頻度が極めて少ない本邦では, その治療戦略におけるknow-howが熟知されているとはいいがたい. 近年の犯罪の欧米化や国際情勢の不安定さを考慮すると, 銃創に対する適切な治療方針を改めて理解しておくことは重要である. 今回われわれは, 腹部銃創の1例を経験したので報告する. 症例は53歳男性.狩猟中に誤って, 左側腹部にライフルの鉛銃弾を受け, 当院救命救急センターに搬送された. 受傷直後のCTでは, 明らかな腹腔内臓器損傷は認めなかったが, 緊急鉛銃弾摘出術と小切開試験開腹術で臓器損傷なきことを確認した. 術後経過良好で, 9PODに退院となる. 腹部銃創では, 銃創の損傷機転を十分に考慮にいれ, 臓器損傷が否定できない場合は可及的に低侵襲で腹腔内検索を行うべきである. また, 長期的な視点から遺残鉛銃弾による鉛中毒の危険性を考慮にいれ, 低侵襲で摘出可能な場合, 全摘出を行うことが重要であると考えられた.
著者
下松谷 匠 増田 靖彦 谷川 允彦 谷口 哲郎 奈良 雅文 村岡 隆介
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.2366-2370, 1995-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
9

ヘルペス脳炎の治療中大量出血,穿孔をきたし,手術にて救命しえた幼児の十二指腸潰瘍症例を経験した.症例は1歳3カ月の女児で,嘔吐を主訴に近医受診し,意識障害を認めたため本院紹介入院となった.意識は深昏睡に陥り,ヘルペス脳炎と診断し, dex-amethasone, acyclovirの投与を開始した.治療開始後大量のタール便を認めたため内視鏡検査を行ったところ,十二指腸からの出血で凝血塊が幽門輪より胃内へ膨隆していた.保存的治療にもかかわらず出血が持続したため緊急手術を行った.十二指腸球部から下行脚にかけての前壁に径約2cmの穿孔を認め,凝血塊などにより覆われていた.胃半切術を行い,再建法はビルロートII法に準じて行ったが,十二指腸断端は閉鎖できず,空腸を十二指腸断端に吻合した.術後経過は良好で3カ月後退院した.