著者
大森 南三郎 末永 斂 大利 茂久 下釜 勝
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.52-56, 1962-03

畜舎の1週間分の廐肥を,底に水をはった堆肥処理場の簀子の上に積み上げ,完全に気密な角型のビニール鐘をかぶせ,その裾はすっかり水中に沈めて廐肥中のハエ幼虫を死滅させる,いわゆるビニール鐘式堆肥処理法を考え,野外実験を行なった結果次のことがわかった.1)廐肥の醗酵は空気の遮断によってほとんど停止し,廐肥中の各令ハエ幼虫は,夏は3~4日間,春秋には4~5日間の空気遮断によって悉く死滅する.2)廐肥の醗酵を停止させ,ハエ幼虫を死滅させる原因は酸素の欠乏と,一部はメタンガスその他の不詳のガスの発生によるものと思われる.3)ビニール鐘をかぶせて空気を遮断し,ハエ幼虫を死滅させた後の廐肥は空気を通すと再び醗酵を始め,ハエの発生源となる.以上のことから,この方法によってハエを撲滅するためには,1週間分の廐肥を積み上げ,直ちにビニール鐘をかぶせ,3~4日間防虫網をはめた鐘の袖から空気を通して醗酵を起させ,内部のハエ卵を悉く孵化させた後で,夏は3~4日間,春秋は4~5日間袖を閉じて空気を遮断し内部のハエ幼虫を殺してから再び防虫網ばりの袖から空気を通して充分醗酵,腐熟させなければならない.An equipment, an air-tight vinyl cover for destructing housefly and stable fly maggots in the animal manure were devised by the senior author. The cover, 80cm by 110cm and 100cm high, is put on the heap of seven days' litter from a cattle-shed piled up on
著者
大利 茂久 下釜 勝 高月 嘉行
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.229-235, 1960-09

1)ハエ類の採集方法に関する研究の一環として,着色トラップによる効果を知るために,白,黄,緑,赤及び黒に着色された5個の魚肉金網トラップを使用して,1958年7月21日~30日,8月22日~28日及び1959年7月6日~23日,11月10日~30日の4回に亘り,それぞれ晴天の5日間を選んで,5個のトラップが5日間に野外の机上に決められた5つの定場所を一巡するように計画して長崎市中央保健所の中庭で採集を行なった.2)各着色トラップで,5日間に5つの場所で採集されたハエ数の差を,分散分析法によって有意性を検定した結果,7,8月に行なった実験I,II及びIIIでは黒や赤では白や黄のトラップでよりも有意的に多く採集されるが,11月に行なった実験IVでは逆に黒や赤では有意的に少ないことがわかった.3)各実験毎に,各着色トラップで採集されたハエ群集の構造を相関係数法により吟味してみると,各群集間の相関係数は高く,4回の実験を通じて,異なった色のトラップで採れるハエ数に有意的な差のあることは,或る特定な種類が或る特定な色のトラップに偏好的又は忌避的に集まることによるのではなく,それぞれの種類は原則的にはほぼ比例的に多く或は少なく集まることによるものと考えられる。4)高温時に行なった実験群(I,II,III)では黒や赤に着色されたトラップで多く採集でき,11月の低温時に行なった実験IVでは逆にこれらの黒や赤色のトラップで有意的に少なかった原因について,一応吾々の見解を述べると,高温時には反射光をあまり出さない暗い色のトラップに多く集まり,反射光を多発する明るい色のトラップを避け,低温時には逆に前者を避け後者に多く集まつたものと考えられる。As a continuation of the studies on the methods of collecting flies, a set of experiments to examine the effect of colored traps were projected. Five traps of the same size and quality, colored by white (W), yellow (Y), green (G), red (R), and black (B) l