著者
倉橋 弘 末永 斂
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.55-58, 1997-03-15 (Released:2016-08-20)
参考文献数
5
被引用文献数
7 8

In the autumn of 1995,we had an opportunity to witness and evaluate the importance of the mass, probably transoceanic, migratory flight and landing of Calliphora nigribarbis Vollenhoven in the campus of Institute of Tropical Medicine, Nagasaki University, Nagasaki, Kyushu, western Japan. On October 25 (14 : 30 to 17 : 30,fine) and 26 (10 : 30 to 17 : 40,fine), they were seen flying in large numbers from the northwest to southeast across the top of the laboratory building (about 10m in height). They flew continuously in the direction of the wind and we caught some of them at the top of the building. They flew vigorously, with many flying well beyond the reach of our insect nets and without changing course. Some flies reaching the building in the evening landed on the concrete wall of the building. The migratory flights were simultaneously observed in Fukuoka where the flies were seen flying from the north across Tsushima-Kaikyo Strait. Fukuoka and Nagasaki are situated about 250 to 300km southeast of the Korean Penninsula. It could be inferred that these flies migrate across from the Asian continent to the main island Kyushu. C. nigribarbis has been considered to migrate altitudinally in the mainland Japan. However, the number of flies found in autumn (November) in Kyushu appears to be also increased by the transoceanic migration.
著者
末永 斂 黒川 憲次 和田 義人
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-54, 1987-03-31

多系統の蚊を累代飼育する場合,なるべく手間のかかならい飼育法の開発が望まれる.蚊成虫の飼育には通常,砂糖水を脱脂綿に含ませて栄養として与えているが,その場合,1~数日置きに新しいものと交換するか,新しい砂糖水を補充しなければならない.われわれは市販の角砂糖と汲み置きの水道水とを別々の容器に入れて与え,成虫を飼育することに成功した.飼育に使用するケージは大きさが200×200×300mmの針金枠にテトロンゴース製の袋をかぶせたもので,このケージを230×320×2mmの塩化ビニール板の上に載せて使用する.このケージ1個で飼育できる成虫数は約1,000個体以内である.ケージの内部には水道水を満たした90mlのプラスチックコップと角砂糖2~3個(蚊の個体数による)を載せた同コップの蓋をそう入する.成虫はコップの水を飲み,角砂糖をだ液で液かして摂取することにより, 2~3週間放置しても健康な状態で生存し,その後でもマウスから吸血し,産卵する.蚊の生存率,吸血率,産卵率,及び卵の孵化率は羽化して約1週間後から多少低下するが,次世代を得るのに支障はない.飼育室内は温度約25℃,湿度約70%,薄明・薄暮を含む長日照明の状態に保つことが望ましい.湿度が高すぎると角砂糖が溶け出し,また低すぎるとコップの水が早くなくなるので共に避けなければならない。出張などで10日間以上放置する場合には,角砂糖を更新し,水の量を多くする.角砂糖の表面が甚だしく汚れた場合には,表面をナイフの縁などで削り落して新しい面を出すことにより再使用できる.われわれはこの方法で,アカイエカ群の数系統の蚊を6年以上にわたり累代飼育している.Although the soaked cotton pad method seems to be the most commonly used technique for providing the sugar solution for adult mosquitoes, the cotton pad must be exchanged with a fresh one at an appropriate interval. For this reason, we examined the cube sugar technique to save us the trouble of handling mosquitoes in the laboratory for rearing several mosquitoes, Culex pipiens complex, Aedes togoi and Armigeres subalbatus. The results showed that this technique seems to be very useful to rear the adult mosquitoes, though the blood feeding rate in cube sugar group was slightly lower than that in 1-5% sugar solution groups. We are maintaining several strains of Cx. pipiens complex successfully by using this technique over 6 years.
著者
末永 斂 劉 維徳 繆 建吾 徐 薇
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.p229-234, 1982-12

アカイエカの産卵活動の季節的推移が1981年8月から1982年7月までの1年間にわたり上海市内の復興公園で調べられた.容量約10lの水がめに水をはり,少量の麩を入れてイエカ用の産卵容器とし,これを公園の一角の人家に隣接した木蔭に設置した.この水がめを毎朝点検し,水表面に産み落されているすべての卵塊を採集して卵塊別に小容器に収容し,27℃の恒温室内で2~3日間放置してそれらの孵化状況を調べた.その結果次のことが明らかになった.アカイエカの産卵活動は平均最高気温が30℃を越す夏の間はむしろ低調である.年間を通じて2つの活動の山があり,最盛期は8月下旬から9月上旬にかけてみられ,もう一つの山は7月上旬頃にみられる.11月下旬から翌年4月上旬までの最高平均気温が10℃以下を示す寒い期間は産卵活動がみられない.1982年春最初の卵塊は5月上旬の最高平均気温が23.9℃,最低平均気温が15.0℃のときに採集された.この蚊の活動の消長は年により,地理的,気候的及び環境的条件によって異なると思われるが,上海におけるアカイエカの産卵活動の季節的推移の型は日本におけるこの蚊の成虫の季節的消長の型に似ているようである.The seasonal change in the oviposition activity of Culex pipiens pollens was observed at Fuxing Gongyuan (Renaissance Park), Shanghai for one year from August, 1981 through July 1982. An earthen jar of about 10 litters in size and containing wheat bran solution was set up as an ovi-trap for house mosquitoes in a corner of the park. All egg rafts of Culex pipiens complex, which were deposited on the water surface in the jar, were picked up every morning and examined for hatching in the laboratory. From the results of the survey, the oviposition activity of Cx. p. pollens in Shanghai seems to be rather low during the summer when the maximum temperatures are over about 30 C. Two clear peaks of the activity were observed; higher peak was in late August through early September and lower one was in early July. No egg rafts were found from late November, 1981 to late April, next year, when the maximum temperatures were below about 10C. The first egg rafts in 1982 were collected in the begining of May when the temperatures were 23.9C (Mean Max.) and 15.0C (Mean Min.). Although the seasonal distribution of activity seems to be different every year by climatic and environmental conditions, the pattern of seasonal change in the oviposition activity of Cx. p. pallens in Shanghai is similar to the pattern of seasonal distribution in adults of this mosquito in Japan.
著者
末永 斂
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.186-191, 1959-06

1) 1954年4月からの約2ケ年間,大村市,諌早市及び長崎市で犬,描,馬,豚,牛,人の野糞,バタリー式鶏舎で7-10日間放置された鶏糞及び山羊舎内の山羊糞の堆積等から発生するハエ類と寄生蜂を調査した. 2)この期間に採集した各種動物の糞塊167塊の中, 120塊からハエが, 7糞塊から寄生蜂が夫々羽化した. 3) 120糞塊からのハエの羽化総数は24種, 5742個体で,イエバエ科に属する種類が特に多い.各種類についてみると,トゲハネバエは鶏糞に,クロオビハナバエは猫と人の野糞に,ノイエバエ,コイエバエ,ノサシバエは牛糞に,ミドリハナバエは豚糞と牛糞に夫々特有であるように思われる.キアシフンバエ,チヤバネヒメクロバエ,オオイエバエ,イエバエ,サシバエ等の主な発生源は畜舎,ゴミ箱,動物の死体等であると思われるが,野糞からもかなり発生することは注目される.牛舎から大量発生するイエバエとサシバエが同じ家畜の野糞からは殆んど全く発生せず,逆に牛舎からは殆んど発生しないノイエバエ,コイエバエ,ノサシバエが牛の野糞からはかなりに発生すること,鶏,山羊の糞が相当量集積すると多数のイエバエやサシバエを発生させること等は興味のあることである. 4) 1糞塊から発生するハエの種類は1~2種の場合が最も普通で, 3種のハエが発生することは比較的少なく, 4種以上の場合は極めて稀である. 5)鶏糞及び牛糞について,月別のハエの羽化数をみると,トゲハネバエ,ヒメフンバエ,キアシフンバエは寒冷期に多いようであるが,他の多くの種類は普通4月から11月迄の長い期間に亘つて発生しているように思われる. 6)寄生蜂の羽化してきた糞塊は僅かに7塊であるが,鶏,犬,豚及び人の野糞から5種の蜂が採集され,その中,犬糞から得られたヒメバチ科の1種は未記録種である.1) The number of flies and their parasites breeding out from animal dungs collected in the field were examined during from April, 1954 to August, 1956 in Isahaya, Omura and Nagasaki areas. The dungs treated in this experiment include that of dog, cat, hor
著者
大森 南三郎 末永 斂 大利 茂久 下釜 勝
出版者
長崎大学風土病研究所
雑誌
長崎大学風土病紀要 (ISSN:00413267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.52-56, 1962-03

畜舎の1週間分の廐肥を,底に水をはった堆肥処理場の簀子の上に積み上げ,完全に気密な角型のビニール鐘をかぶせ,その裾はすっかり水中に沈めて廐肥中のハエ幼虫を死滅させる,いわゆるビニール鐘式堆肥処理法を考え,野外実験を行なった結果次のことがわかった.1)廐肥の醗酵は空気の遮断によってほとんど停止し,廐肥中の各令ハエ幼虫は,夏は3~4日間,春秋には4~5日間の空気遮断によって悉く死滅する.2)廐肥の醗酵を停止させ,ハエ幼虫を死滅させる原因は酸素の欠乏と,一部はメタンガスその他の不詳のガスの発生によるものと思われる.3)ビニール鐘をかぶせて空気を遮断し,ハエ幼虫を死滅させた後の廐肥は空気を通すと再び醗酵を始め,ハエの発生源となる.以上のことから,この方法によってハエを撲滅するためには,1週間分の廐肥を積み上げ,直ちにビニール鐘をかぶせ,3~4日間防虫網をはめた鐘の袖から空気を通して醗酵を起させ,内部のハエ卵を悉く孵化させた後で,夏は3~4日間,春秋は4~5日間袖を閉じて空気を遮断し内部のハエ幼虫を殺してから再び防虫網ばりの袖から空気を通して充分醗酵,腐熟させなければならない.An equipment, an air-tight vinyl cover for destructing housefly and stable fly maggots in the animal manure were devised by the senior author. The cover, 80cm by 110cm and 100cm high, is put on the heap of seven days' litter from a cattle-shed piled up on
著者
末永 斂
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.76-90, 1969-10

The present author established the table of diagrammatic calendar ages of the housefly females, Musca domestica vicina, applicable to each month of the breeding season. The table was made on the basis of the examinations for the development of follicles and ovariole changes following oviposition carried out under various laboratory conditions. Using the table for the determination of age distribution of female populations collected in nature at intervals before and after the application of different residual insecticides to the different three villages, and comparing the changes in age distribution of the female populations collected in each village, he tried to evaluate the effect of the insecticides used.著者はイエバエMusca domestica vicinaを25℃,約70%比湿の下で1対飼育し,年令既知の雌群について濾胞の発育,経産に伴う黄体の濾胞管基部(現濾胞から小輸卵管までの間の部分)における分布,量,及び色彩等を調べて,本種の年令を未経産,1回,2回及び多経産に区分した(第1表)3回以上の多経産雌の場合にはこれを更に区分することは出来ないが,25℃,70%比湿の下で飼育したものでは11回も産卵をくり返す雌がある.継続1対飼育した雌群についてみると,卵塊当りの卵粒数は最初から5回位迄は大体100粒程であるが,経産が進むにつれてわずかずつ減少する.しかしこれらの雌群の死亡率をみると第6回産卵以後は極めて急激にその率が高くなる.第1回目のgonotrophic cycle(=前産卵期間)は25℃で7日を要するが,第2回目以後(=産卵間隔)は2~3日となる.イエバエの発生期間中の各月,5月から10月まで,1回ずつ24~55対(5月には9対のみ)のイエバエを1対飼育して,平均未経産期(=前産卵期間)(範囲)及び以後の平均産卵間隔(範囲)を調べた結果は以下の通りである.5月:11日(8~20),7日(4~16) 6月:8日(4~11),4日(2~6) 7月:5日(4~10),2日(2~4) 8月:5日(3~12),3日(2~4) 9月:5日(5~10),3日(2~10) 10月:8日(6~9),4日(3~7)この成績表から第3表に示すように各月におけるCalendar ageを模式的に決定した.このCalendar ageを用いて,1964年にダイアジノン,ナンコール及びバイテックスで残留噴霧を行なったS,H,及びO部落で残留噴霧前後にある間隔で採集した各回の個体群の年令構成を吟味し,各部落における年令構成の経日的変化を部落間で比較してみると,経産雌の現われ方がS部落で最も遅く,H部落でやや早く,O部落で最も早いことが判ったが,この傾向は同年同期間中ハエ格子で調べた各部落でのハエ指数の消長とかなりよく一致した.従って1964年に上記3部落で実験した限りでは,ダイアジノン,ナンコール,及びバイテックスの順に効果があったといえる.
著者
末永 斂 宮城 一郎 氏家 淳雄 林 薫 三舟 求真人 二ッ木 浩一
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.136-142, 1967-12

アーボウイルスの分離と関連してTanzania国のMwanza地方で1966年8月から1967年2月まで蚊の調査を行なった,蚊からのウイルス分離成績については別報でのべられるので,本報では採集された蚊の種類とそれらの生態についてのべる.この地方は海抜1000米以上の高地で比較的涼しく,6月頃から10月頃迄の乾期と11月頃から5月頃迄の雨期とに区別される.Mwanza及びその周辺における蚊の発生可能水域としてはVictoria湖岸の大小の湿地帯,一部破損した古い水洗便所の浄化槽,流れのとまった小さな河川の水たまり,及びその河口附近の岸辺等がある.成虫の採集は湿地帯の附近,市街地の人家内,森林地帯など9カ所(第2表)で実施し,この中3ケ所では二重蚊帳による夜間吸血活動の時間的消長についても調べた.9地点で採集された蚊は9属約38種,雌25185個体,雄2264個体で,この中,Bukobaの森林地帯で採れたHodogesia sanguinae, Eretmapodites grahamiの2種はTanzania国から初めての採集記録であると思われる.恒久的湿地帯の近くではMansonia africanaとMansonia uniformisが圧倒的に多く,市街地の屋内ではCulex pipiens fatigansのみが採集されるが湖に近い人家の附近ではこれらの3種が共にかなり採集される.H356ウイルスが分離されたCulex decensは比較的大きな恒久的湿地帯の近くでかなり採集された.湿地帯を内部にもったBukobaの閉鎖的森林地帯ではMansonia, Aedes, Orthopodomyia, Culex等に属する18種の蚊が採集された.Anopheles gambiae, An. funestus, Aedesaegypti等は少数採集されたにすぎない.Mansonia africana, M. uniformis及びCulex decensの3種は日没と共に飛来し始め,真夜中にピークを示し,日の出前迄吸血活動をつゞける.Culex pipiens fatigansは日没と同時に飛来し,午後8時頃ピークに達し,一且減少するが,早朝にもう一度ピークを示し,日の出前迄活動するように思われる.Mosquito survey in the highland district of the Republic of Tanzania,mainly in Mwanza region situated at south lake-side of Lake Victoria,Were carried out from August 1986 to February 1967. Over twenty seven thousand mosquitoes representing about 38 species of 9 genera were collected mainly by using human baited traps at nine different sites. Four mosquito species, Mansonia africana, M. uniformis, Culex pipiens fatigans and C. decens, were in about 91 per cent of all mosquitoes obtained in the survey. These Mansonia species and Culex decens seemed to breed in the open-permanent swamps near Lake Victoria, and Culex pipiens fatigans was breeding in cesspools and gutters around dwelling houses. Hodogesia sanguinae and Eretmapodites grahami which had not been found in Tanzania were collected at Munene and Ruasina forests in Bukoba area, and Anopheline mosquitoes, though very small in number, were collected in 10 species. The majority of mosquitoes collected were used for the isolation of arboviruses, however out of them only one strain (H336) was isolated from a pool of Culex decens collected nearby a open-permanent swamp, Mwanza. We wish to express our sincere thanks to all staffs of East African Institute for Medical Research, Mwanza for their kindness to accomplishment of our survey and to staffs of East African Virus Research Institute, Entebbe, Uganda for their kind advices, and also to officers of Mwanza Regional Forest Office and its branches for their kind help to collect mosquitoes in forests.