著者
中世古 知昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.987-994, 2020-05-10 (Released:2021-05-10)
参考文献数
11

多発性骨髄腫は,化学療法に対する反応性が不良で,治癒困難な疾患であったが,1990年代以降,自家造血幹細胞移植療法が確立し,さらに2000年代に入り,プロテアソーム阻害薬(proteasome inhibitor:PI)であるボルテゾミブや免疫調整薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)であるサリドマイド及びレナリドミド等の新規薬剤が次々と登場し,予後が劇的に改善した.さらに,第2世代のPIであるカルフィルゾミブやイクサゾミブ,IMiDsであるポマリドミドに加え,骨髄腫細胞上に発現するCD38やSLAMF7を標的とするダラツムマブやエロツズマブといった新規抗体薬も登場し,多発性骨髄腫の予後はさらに改善しつつある.また,フローサイトメトリーやPCR(polymerase chain reaction)法,次世代シークエンサーによる微小残存病変(minimal residual disease:MRD)検出法が開発され,MRD陰性化が得られた症例では,生存期間が大幅に延長することが示されている.
著者
横田 朗 深沢 元晴 中世古 知昭 石井 昭広 池上 智康 木暮 勝広 西村 美樹 松浦 康弘 森尾 聡子 中村 博敏 王 伯銘 比留間 潔 浅井 隆善 田辺 恵美子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-39, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
12

症例は36歳男性。12歳時より尋常性乾癬を発症し,ステロイド外用剤およびPUVA療法を行ったが,改善は軽度であった。1987年再生不良性貧血を発症。各種治療が無効のため,1993年同種骨髄移植を行った。移植前処置はtotal lymphoid irradiation 7.5 Gyとcyclophosphamide 200 mg/kgで行い,GVHD予防はcyclosporin A + short term methotrexateで行った。移植前の乾癬の活動性は高く,全身性に融合傾向の強い紅斑が多発し,著しい爪の変形も認められた。移植後十分な造血の回復とともに,皮疹は消失し,爪の変形も改善した。乾癬の発症には免疫学的機序の関与が知られているが,同種骨髄移植による細胞性免疫の再構築により乾癬の消失が得られたと考えられた。難治性の免疫異常による疾患に対して,同種骨髄移植が一つの治療法となり得ることが示唆された。