- 著者
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中井 暉久
- 出版者
- 公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
- 雑誌
- Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.2, pp.113-122, 1986-06
戦火で焼け出された難民が敵襲を避けながら安全地帯へ移動するとき、彼等はどのように行動すべきか?一刻も早く安全地帯へ進むべきか、それとも移動すると発見されやすいので、原地点に留まるべきか留まるべきか、あるいは後戻りして滴の目をくらましながら戦争終結を待つべきか?離散型の逃避-探索逐次ゲーム論文は極めて少ないが、本論文では上のような問題を次のような2人0和逐次ゲームとして定式化する。箱0、1、2、・・・が、この順序で一列に並んでいる。逃避者(player I)は、ある箱からスタートし各期で、(i)現在の箱に留まる、(ii)右隣りの箱に移る、(iii)左隣の箱に移る、の三つの決定から1つを選ぶ。探索者(player II)は、各期で0以外の任意の箱を探索する。箱0は逃避者にとっての安全地域でありゴールである。逃避者は直前の期に隣りの箱から移ってきた場合と、続けて同じ箱に留まっている場合の二通りの条件付き発見確立が与えられている。また、各期の終わりに逃避者の位置が探索者に分かるものとする。利得関数は、定められた期間内に逃避者が発見されない確率である。論文では、この逐次ゲームを再帰関係式で表わし、k期間逐次ゲームの解が次々と計算可能である。解の特徴としては、逃避者の位置がコールに極めて近い所では、彼は全速力でゴールへ飛び込み、ゴールから少し離れた場所では、ゴールに近づくか、現位置に留まるかであって、後戻りはしない。これに対し、ゴールから遠く離れた所では、あたかもゴールがないかのようにかくれ、従って逃避者の最適戦略は完全混合型となり、後戻りする正の確が存在する。探索者の最適戦略も、それ等に応じたものとなる。