著者
鳩山 由紀夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.106-122, 1979-06

本論文はDerman(1963)によって導入されたマルコフ型劣化を伴なう機械の保全問題の拡張である。拡張は系が閉じたループをなしていること、取替でなく修理問題であること、及び複数の修理施設をもつことに見られる。即ち、系は、有限個の劣化の状態をもち劣化の進行がマルコフ鎖で記述される単一の稼動機械と、同一機能をもつ有限個の予備機械、及び修理の種類毎に異なる複数の修理施設とからなる。各時点において、稼動機械を修理すべきか否かを決定することが問題となるが、その決定の際に、稼動機械の劣化の程度、修理がなされるときに要求される修理の種類、更に各修理施設で修理中の機械の数が情報として与えられる。修理がなされるときには、機械は修理の種類に対応した修理施設に直わに送られ、修理が開始され、同時に予備機械の一つが新たに稼動を開始する。修理時間は修理施設に依存する幾何分布に従うものとし、修理後は新晶同様の状態に戻ると仮定する。予備機械の用意が間に合わないときには、一つの機械の修理が終了する迄稼動は休止せざるを得ず、この間ペナルティが課せられる。その他のコストとしては、作動費用、材料費及び労賃を考慮している。以上のモデルを設定し、割引率を考慮した総期待費用、乃至は平均期待費用を最小とする最適保全政策が如何なる形となるかを考察する。ここで、修理の種類を固定したとき、稼動機械の劣化がある限界を越えたときのみ修理を施し、又稼動機械の劣化の状態を固定したとき、修理の種類がある限界を越えないときのみ修理を施すという二次元のコントロールリミットポリシーを提案し、緩やかな条件の下で最適政策がこの形となることを示す。次にコスト等を一般化し、更に保全員が各修理施設に一人づつの場合にも同様の議論がなされることを確認し、最後に解法に触れている。
著者
鳩山 由紀夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.224-242, 1980-09

確率的に故障する機械の取替問題は従来盛んに研究されているが、この論文では、取替時に故障部品の下取りが行なわれ、又交換部品をいくつかの種類の中から選択出来る場合に如何に取替部品の選択を行なうべきかを考察する。具体的には次の問題を考える。あるシステムと、そのシステムに欠くことの出来ない一部品を取り上げる。システムはある有限時間丁動作することを要求される。部品の故障はシステムの故障を導くので、残り時間t(t > 0)で部品が故障した場合、直ちに新都晶と取替えなければならない。ここで部品にはタイプがn種類存在し、どのタイプの部品に取替えるかが問題となる。簡単化の為に、各タイプの部品の故障は指数分布に従うものとする。この仮定は実際の故障分布の第一近似と見傲されよう。取替費用としては、タイプiの部品をjの部品に取替えるときC(i、j)かかるとする。部品の故障時に新部品を購入して取替を行なうが、購入時に故障部品を下取りするケースはしばしば存在する。このような場合、取替費用は新部品の購入費のみでなく、故障部品にも依存する。この設定の下で、期待費用を最小とする取替方式を決定したい。実例としては、車のタイヤやバッテリー等を取替える際の製品の選択とか、ステレオコンポネントのプレーヤー等を交換する際の製品の選択問題などを頭に描くと良いと思われる。一般の取替費用の場合に、いくつか解の性質が得られるが、特に劣モジュラー関数で与えられるとき、以下の性質が導かれる。残りt時間でタイプi(j)の部品が故障したとき、タイプi*(j*)が最適な取替部品であるとすると、i < jならばi* < j*となる。これは最適政策を計算する際に利用される。なお、劣モジュラー関数の仮定は、下取り価格が2部品問の互換性などで表わされる場合にはかなり妥当と思われる。その他、販売戦略等に依り全てのタイプが下取り可能とは限らない場合についても同様な議論がなされる。下取り価格が故障部品のタイプのみによって決定される場合には、最適な取替部品のタイプは故障部品に依存しない。更に、最適取替費用は残り時間tに関して区分的に線形な凹関数となることが示され、実際、陽に最適取替政策及び費用が導かれる。最後に、考察すべき部品が唯一つとは限らないケースを扱う。それらが直列、並列、直並列等につながっている場合、多くは単一部品の問題に帰着されることを示す。
著者
中桐 裕子 栗田 治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.44-63, 2002-03
参考文献数
10

本研究は,従来のモデルでは追従しきれない成長現象を記述するモデルとして,階層構造を有する成長現象の微分方程式モデルを取り上げ,考察を加えるものである.ある種の成長現象は,η種の性質を順番に取得するといった「階層的な」構造を持っている.そこで本研究では,ある段階の性質を身に付ける個体数の成長速度が,その段階および直前の段階の性質を入手している個体数に依存するという仮定を設けて,『段階的成長微分方程式モデル』を作成した.同様の仮定から,宅地化を経て市街化面積が広がる様子を上手く記述するモデル等が提案されているが,本研究では,従来の研究にはなかった多段階成長の連立微分方程式に着目して,これに一般解を与える.モデルの適用例としては,特にゲーム機の売上データを取り上げた.ハード購入希望者→ハード購入者→ソフト購入者といった階層的な構造を定式化したモデルを実データに当てはめた結果,発売直後のハード売上を再現するには,段階的成長モデルが有効であることが確認できた.更にこのモデルを応用して,値下げキャンペーンによる売上増を記述できる簡便なモデルを作成することに成功した.過去の分析例や今回の研究成果より,ゲーム機売上の記述に留まらず,他の社会現象の中にも,このモデルによる記述が有効な局面も存在するのではないかと考えられる.
著者
プレマチャンドラ I.M 森村 英典
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.112-133, 1985-06

小切手現金化窓口で、平均50分にも及ぶ長い待ちが生じている。この銀行では、到着客はcashierのところで小切手を差出すと、番号札を渡されて待つ。cashierは何人かの客の差出した小切手の内容をscroll bookに書込むとそれをofficerに小切手とともに渡す。(step1) officerは小切手の正当性(預金残高が確かにあること等)を調べた後、支払承認のサインをscroll bookに記入する。(step2) bookに記入された小切手全部に対する承認が終ると、bookは再びcashierに戻され、番号札と引替に現金が支払われる。(step3) 通常scroll bookは複数なので、step2の作業が行なわれている間、step1の作業は、次の客の集団に対して、別のbookを利用して実行され、officerから処理済のbookが戻された時点で中断して、そのbookをstep2に廻し、cashierはstep3の作業にとりかかる。このように、この待ち行列システムは、step2のサービス終了によってstep1のサービス時間が規定され、それが集団の大きさを定め、次のサービス時間に影響する、という形で進行するのでかなり複雑であり、正面から確率論的取扱いをすることは難かしい。たまたま、長い待ちを生んでいる現状なので、流体近似モデルを作って解析を試みた。現実の挙動をできるだけ追うような形でシミュレーションモデルも作り、その結果と流体モデルからの結果とを比較すると、少なくとも現状程度の待ちのあるときは、かなり良く合う。そこで、流体モデルによって、待ちを減少させるために、一度にbookに書込む客の数をどのようにするのがよいかを考え、野放図にその数を増やさず一定に押さえる方がかえって良い結果の得られることを示した。また、このモデルは、流体近似の適用可能性を探る一例となると思われたので、サービス時間分布、サービス速度、初期時点における客数等を変えて計算値とシミュレーション値との相対誤差を調べてみた。この結果、初期時点から窓口が空くようなことが起こらない限り、トラヒック密度が1にかなり近くなっても、流体モデルはなお有効であろうとの見通しを得た。
著者
末吉 俊幸
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.261-275, 1997-06
被引用文献数
4

本研究の目的は最小絶対値法が現在広く使われている最小二乗法に匹敵しうる種実用性の高い回帰分析手法であることを示すことにある。本論文の前半では、18世紀にさかのぼり、その歴史的考察を行うとともに、最小絶対値法を目標計画法の視点で考察する。後半では、最小絶対値法に関する統計理論とその統計的検定への応用を示した。重要なことは、最小絶対値法も最小二乗法も数理計画法でモデル化され、従来とは違った理論展開と応用可能性が開けることにある。
著者
井山 俊郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.237-257, 1981-09

この論文では、一方の工程が複数個の指数作業時間を持つステーションから成る2工程生産ラインを解析する。最初に、このラインを隠れマルコフモデルとして解析し、生産率、平均仕掛品数等を解析する手順が示される。また、双対モデルに対する解析手順も示され、双対モデル間の種々の関係が議論される。この結果、一方の生産ラインの特性はその双対モデルから完全に求められることが明らかとなる。次に、ステーション数の生産率に及ぼす影響を調べるため仮想Buffer容量なる尺度が導入される。この結果、仮想BUffer容量はステーション数の影響を端的に表わすこと、さらにこの仮想Buffer容動機型の漸近線を持ちしかもこの漸近線は仮想Buffer容量を精度よく近似していることが示される。最後に、この仮想Buffer容量の漸近線を求める簡単な手順が示される。
著者
黒川 泰亨 中村 健二郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.259-272, 1977-12

The forest production greatly relies on nature and variations of the natural conditions related to the production are not small. Then, because of the long production time span, it is necessary to concider the forest management planning as a planning under uncertainty. The purpose of this paper is to present a forest management planning by coordinating the uncertainty and the efficiency of forest production. The theory of stochastic programming is applied. The forest management planning consists of two phases: One is long term and the other is short term. This paper is concerned with the long term planning such as from 60 to 80 years. This planning is how to derive the present forest condition to the objective forest condition and this is one of the most basic requirements in forest management planning. In this paper, the objective forest stand condition is the normal age-class arrangement. A planning method applied here is to minimize the variance of forest yield volume under the condition of keeping its expectation arbitrarily fixed, and the other planning method adopts one of the von Neumann-Morgenstern utility functions. They are formulated as a quadratic programming problem. The methods are applied to a real forest management planning and the unique optimal plan is provided for this case. Our models will be significant in the planning at the divisional forest-office in the national forest.
著者
石川 真 中村 健二郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.225-232, 1979-09

Nは任意のプレィヤーの集合、Ωは任意の選択対象の集合、各プレィヤーiはΩ上の選択対象に好ましさの順位(序数的選好順序)P^iをもつと仮定し、かかるP^i全体をDとがき、NからDへの関数をP^Nとかく。なお、本論文では選出公理を仮定する。いま、Nの部分集合(提携)からなる族Wを与え、Wに一属す提携を勝利提携という。勝利提携はΩの任意の選択対象を決定するパワーをもち、それゆえこのゲームは一般化された多数決ゲームとみなされる。かかるゲームを(序数的選好順序を前提とする)単純ゲームとよび、コア等の解の概念が定義される。中村は、この単純ゲームにおいて、PNがあらゆるパターンをとる時、コアが存在する必要条件は拒否権をもつプレィヤー存在するか、または、このゲームに固有に定まる濃度がΩの濃度より大きいことを証明した。なお、Ωが有限の時、この条件は十分でもある。この定理により、社会選択論における一般可能性定理および種々の拡張等が統一的に尊びかれる。本論文では。上記定理の証明が実質的には単純ゲームだけでなく、一般の特性関数ゲームについても同様の結果を尊びくことが明らかにされる。すなわち、vを提携Sに対し、Ωの部分集合を対応させる特性関数とし、特性関数ゲームG=(N、Ω、v)を考える。選択対象xがv(S)に属す時、提携Sはxに対して有効といい、かかるS全体をE(x)とかく。いま、各xに対して、E(x)の中から任意に提携S(x)を選び、これらS(x)の共通部分がつねに空でない時、この性質を仮に完全交叉性とよぶ。この論文の主要定理は特性関数ゲームGが、PNがあらゆるバターンをとる時、コアをもつならば、Gは完全交叉性をみたすということで、Ωが有限ならば逆も成り立つということを述べている。この性質を単純ゲームにおいて述べれば、既に上述した結果が得られる。また、Nを有限とし、単調・対称ゲームについて述べればPolishchukの結果が得られる。
著者
久我 清 永谷 裕昭
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.275-305, 1984-12

銀行・証券・郵貯をとりまく競争の激化と企業・家計側の金利選好意識の強まりは我国の金融環境を激変させずにはおかない。アメリカの金融革命においても高利回りの清算総合口座のMMFなどが焦点となったように、我国の金融新機軸の切り札は「総合口座」である。現在、総合口座は銀行・郵貯・農協・労金など凡ゆる金融機関で取扱われており、公共料金その他を清算する普通預金口座と定期預金を担保とする自動貸越契約を連動させるシステムとなっている。金融機関側は家計のメイン・バンク化というテーマから「総合口座」をセールス活動の橋頭窒としているが、翻って、家計側からすれば、このシステムをどのように利用するのが最適であるか。本論文ではこの問題が、銀行については通常の凹計画として郵貯については非凹な折れ線計画として、解き得ることを示し、その最適運用法と日常利用可能な簡易ルールを確立した。結論:普通預金残高の計画期間にわたる流れを正確に予想せずとも、計画期問の凡そ95%の日数が赤字残高になるように定期預金残高を設定するのが最適である。より簡便な方法は、毎月給与振込の3日後ぐらいでの残高がゼロとなればよい。この方法を月収30万円の家計が採用すれば、年凡そ6、000円程度の追加的利息を得る。仮に、全家計が最適運用を始めた場合、金融機関側の追加的総負担額は約6、000億円に昇る。
著者
伏見 正則
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.350-359, 1981-12
被引用文献数
2

本論文は、吉典的ないわゆる秘書選びの問題(secretary poblem、以下SPと略す)に対する解が、雇用がある種の競合状態にある場合にはどのように変わるかについて考察したものである。基本的なモデルは次のとおりである。二つの会社がそれぞれ1人の秘書を採用しようとしている。n人の応募者が、ランダムな順番で毎朝1人ずつ現われ、各社は他社と独立にこの応募者と面接する。採否の決定は、その日の午後応募者に伝えられる。採用通知を出した会社は、残りの応募者の面接は行なわない。一社だけから採用通知を受けた応募者はその会社に採用されるが、両社から採用通知を受けたものは、等確率でいずれか一方を選んで就職する。両社の目標は、n人の候補者の中の最良のものの採用に成功する確率を最大にすることである。この問題は、二人非零和非協力ゲームの一種である。SPをゲーム論的に扱ったモデルは従来いくつかあるが、それらに対するNash均衡解は、どのプレーヤーの戦略も同じで、SPの場合よりも早めに採用を決めようとするものである。われわれのモデルにおける均衡解は、これらと対照的に、一社はSPの場合よりも早めに採用を決めようとし、他社はSPの場合よりも遅めに採用を決めようとする戦略である。雇用が競合する状態になると、各社が競って早期に採用を内定しようとする、いわゆる青田買い競争の現象がしばしば見られるが、本論文の結果は、そのような競争が必ずしも得策でないという教訓を含んでいる。最後に、他社の採否の情報が伝わる場合についてのモデルについても論じている。
著者
石井 博章
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.469-476, 1978-12

Kthバス問題は、バスとしてループを含むことを認める場合と認めない場合、さらに負の距離を考える場合と考えない場合などに、分類される。それらの解法も、最短路からなるツリーを利用する方法、最短路アルゴリズムを繰返し適用する方法、DPによる方法そして経路代数による方法など、いくつか存在する。しかしそのほとんどが、パスとしてループを含むことを認めるものであり、J、Yenの最短路アルゴリズムを繰返し利用する方法が現在唯一のループを含まないパスを求める方法と考えられる。ここでクラブ理論でよく知られている結果、P_1を始点_sから終点_tまでのループを含まないパスをするとき、s、t間のループを含まないパスの集合{P}は{P}=min{P_1[○!+]E;E∈{E}}によって表わされる(Eはオイラーグラフ)、を利用することにより、非負の距離を仮定したグラフ内の任意の2点間のループを含まないKthパスを求めるアルゴリズムを提案する。(ただしK番目パスの長さはK-1番目のパスの長さに等しくてもよいとしている)まず最短路アルゴリズムにより、最短路からなるツリーをつくり、そのツリーを利用してツリーに含まれない枝を正確に一本含むサーキット、C_1、C_2、…、C_<m-n+1>をつくる(m、nはそれぞれグラフ内の枝と点の数)。R_1={P_1}、Q_1=P_1として、一般にk〓2にたいしR_k=(R<k-1>-{Q<k-1>})∪{Q<k-1>[○!+]C_i}となる集合R_kをつくる。ここでC_iはQ<k-1>をつくるために使われていないものとする。次にR_kの中で最小の長さをもつサブグラフの1つをとり出しQ_kとする。このようにして順にQ_1、Q_2、…Q_k、…を求め、この中でパスとなるものを順次取出すことによりK番目のパスを求める。この方法はグラフの構造により効率が大きく変化するが、鉄道のネットワークなどには実用性が確かめられた。
著者
毛利 裕昭 久保 幹雄 森 雅夫 矢島 安敏
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.372-388, 1996-09
被引用文献数
6

配送路問題(Vehicle Routing Problem -VRP-)は、「デポ(配送拠点)から配送先のノードに商品等を配送する最小コストのルートを求める」という問題である。この問題は古くから研究がさかんに行なわれており、標準的VRPの基本的な条件としては、以下のものが挙げられる。第1に1つのルートでの積載量が車両の容量を超えないこと、第2に車両数(ルートの数)が上限を超えないこと、第3に配達先のノードは1台の車両で1度だけ配送が行なわれること等である。本論文ではVRPの基本条件である第3の条件を緩和した「分割配送路問題」と呼ばれる複数の車両によるノードの配送を許す問題を考える。このような条件を考えることにより車両の積載効率が上り、必要な車両の数(固定費用)を減少させる可能性が高まる。この分割配送路問題に関する研究は少なく、本論文では新たな定式化を行ない、Fisher and Jaikumarのアイディアにしたがって問題を、車両が配送を行なうノードおよびその配送量を決定する問題と担当ノードが決定した段階で各車両の配送経路を決定する問題に分解することにより数理計画べースの新たな解法を与えている。
著者
中西 昌武 木下 栄蔵
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.560-571, 1998-12
被引用文献数
10

本論文は, 集団意思決定を効果的に行うために, 新しい手法「集団意思決定ストレス法」を提案し, Analytic Hierarchy Process (AHP)への適用を検討する. この手法は, 評価者の原始データ(見解)を操作することなく, 各評価者の不満の総和(集団意思決定ストレス)を最小化する評価者格付けを行う. 参加者の合理的な格付けの結果, 類似見解が多い見解の持ち主の重みは大きくなり, 孤立した見解の持ち主の重みは小さくなるが, それぞれの重みが不当に重んじられたり軽んじられたりすることはない. この手法を用いることにより, 類似見解グループの探索や, それに基づく集団案の収斂が行いやすくなる.
著者
中川 覃夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-27, 1980-03

この論文では、予備ユニットから成り立つシステムの点検方策について議論する。例えば、停電したとき、もし予備発電機が故障していたならば、病院とか大きなビルでは非常に危険な状態を招くであろう。他の例として、敵の攻撃から守るための軍用機器をあげることができる。このように、要求されたとき、そのシステムが故障している状態をできるだけ避けるために、日頃から点検しておくことは重要である。ここでは、予備発電機を例にとって、停電が起るまでの点検方策を考える。すなわち、一定時間間隔古t_0で点検し、もし故障を発見したならば、修理する。修理終了後、点検はまた一定時間問隔t_0で行われ、停電が起ったとき、この過程は終了する。このモデルは有限状態をもつマルコフ再生過程を形成し、再生型方程式を作ることによって、平均点検回数、平均修理回数、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率、を求めることができる。ここでは、とくに、停電が指数分布に従って起ると仮定する。そのとき、ある適当底費用を導入し、前の結果を利用することによって、停電までの期待費用を求め、それを最小にする最適方策を決定する。ある簡単な条件のもとでは最適点検時間が方程式の解として一意的に定まる。更に、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をできるだけ小さくするための点検方策も求める。すなわち、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をある与えられた小さい値よりも小と底る点検時間を求みる。最初のモデルでは、点検によって発電機は新品同様になると仮定しているが、点検によって故障率は変化しない場合も考えることができる。この場合、停電が起るまでの期待費用と有限な点検時間が存在するための十分条件を与えるが、一般に解析は難しい。しかし、期待費用は点検時間t_0の関数として与えられているので、それを計算することは容易であろう。更に、予備発電機が停電で稼動中のとき故障する場合も考え、前と同様な方法でこの場合の期待費用も求める。数値例として、点検によって予備発電機が新晶同様になる場合と故障率が変化しない場合の最適点検時間を求め、比較する。更に、停電時間をxとしたときの最適時間も求める。
著者
平岡 和幸 吉澤 修治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.509-530, 1998-12

心理学において, 「慣れ」や「飽き」のように, 同じ選択を続けると効果が悪くなる現象を記述する, ロブ-パス問題と呼ばれるモデルがある. Abe and Takeuchiは, この問題をオンライン学習問題として定式化し, それがmulti-armed bandit問題の拡張とみなせる事を指摘した. 古典的なbandit問題との違いは, プレイヤーの選択が環境自体に影響を与え, 環境を変化させてしまうという点にある. 学習問題としてのロブ-パス問題に対してこれまでに提案された戦略は, すべて基本的に, 「未知環境からの反応をもとに, その環境に対する最適"定常"戦略を推定し, その戦略に従って選択肢を選ぶ」ということを繰り返すものである. また, 戦略の評価には, 環境が既知だった場合の最適"定常"戦略と比較して, 実際には環境が未知な事によるロスが, どの程度におさまるかを基準としている. このような方針が妥当かどうかを判断するためには, 環境が既知だった場合の(定常とは限らない)最適戦略を知っておく必要がある. 本論文はこれを導出する. その系として, 従来研究で仮定されていた「マッチング条件」が, 最適戦略が打ち切り時刻によらないための必要十分条件となっている事を指摘する. これにより, 目標として"定常"戦略のみを考えることの正当性が保証されることになる. マッチング条件自体の意味や妥当性に関する議論も行う. さらに, 漸近最適性を定義し, 忘却ありの相手なら定常戦略が漸近最適となるが, 忘却なしなら漸近最適戦略は存在しない事を示す.
著者
中井 暉久
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.113-122, 1986-06

戦火で焼け出された難民が敵襲を避けながら安全地帯へ移動するとき、彼等はどのように行動すべきか?一刻も早く安全地帯へ進むべきか、それとも移動すると発見されやすいので、原地点に留まるべきか留まるべきか、あるいは後戻りして滴の目をくらましながら戦争終結を待つべきか?離散型の逃避-探索逐次ゲーム論文は極めて少ないが、本論文では上のような問題を次のような2人0和逐次ゲームとして定式化する。箱0、1、2、・・・が、この順序で一列に並んでいる。逃避者(player I)は、ある箱からスタートし各期で、(i)現在の箱に留まる、(ii)右隣りの箱に移る、(iii)左隣の箱に移る、の三つの決定から1つを選ぶ。探索者(player II)は、各期で0以外の任意の箱を探索する。箱0は逃避者にとっての安全地域でありゴールである。逃避者は直前の期に隣りの箱から移ってきた場合と、続けて同じ箱に留まっている場合の二通りの条件付き発見確立が与えられている。また、各期の終わりに逃避者の位置が探索者に分かるものとする。利得関数は、定められた期間内に逃避者が発見されない確率である。論文では、この逐次ゲームを再帰関係式で表わし、k期間逐次ゲームの解が次々と計算可能である。解の特徴としては、逃避者の位置がコールに極めて近い所では、彼は全速力でゴールへ飛び込み、ゴールから少し離れた場所では、ゴールに近づくか、現位置に留まるかであって、後戻りはしない。これに対し、ゴールから遠く離れた所では、あたかもゴールがないかのようにかくれ、従って逃避者の最適戦略は完全混合型となり、後戻りする正の確が存在する。探索者の最適戦略も、それ等に応じたものとなる。
著者
須永 照雄 近藤 英二 ビスワス シャマン・カンティ
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-44, 1978-03

待ち行列問題に対し、理論と応用のギャップを埋めるため、いくつかの近似手法が発表されている。ラッシュアワー問題など、長い待ち行列を有するシステムに対し、連続モデルを利用する方法がすでに試みられている。こゝでは必ずしも長い待ち行列を有しないいくつかの典型的な問題に対し、連続モデルを利用する手法を提案し、厳密解と近似解の比較よりその有効さを示した。まづ、単一窓口待ち行列問題を扱っている。到着率をλその分散を△iとし、サービス率をμその分散を△_0とするとき、入力を平均入分散△iの正規確率過程と考え、出力を平均μ分散△_0の正規確率過程と考える。次に系内客数Xの確率密度関数f(X)に関する拡散方程式を立て、指数型の解を得る。系内平均客数Lの近似式はf(x)の平均で与えられることは知られているが、これは待ち行列が充分長くシステムが殆んど空にならないことが前提となっている。一方、厳密解の特性としてL=ρ≡λ/μ(ρ<<1)が知られている。そこで近似式に補正項を加え前記の特性を持たせた。すなわち[numerical formula]なる式を提案している。M/G/1(∞)の場合、近似式はヒンチン・ポラチェックの式と一致している。他の数値例としてE_2/E_2/1(∞)およびE_<10>/M/1(∞)を扱っている。単一窓口で系内客数に制限mが課せられているとき、系内平均客数はL≒∫^m_0 xf(x)dxで与えられる。この場合も厳郁解の特性L=ρ(ρ≪1)およびL=m(ρ≫1)をもつように、適当な補正項の追加と積分の上限mの変更を行っている。複数窓口を有する待ち行列問題に対しては、上記のような厳密解の特性を利用することができないので次の手法を用いた。入力として平均μ分散△iの正規確率過程を考え、出力として、系内客数Xが窓口数sより小のとき、平均xμ分散x△_0なる正規確率過程を考える。このときの拡散方程式の解をf_1(x)とする。xがsより大なるとき、出力は平均sμ分散s△_0となり、拡散方程式の解をf_2(x)とする。解f_1(x)とf_2(x)はx=sで連続的に接続させ、これを用い待ち行列の長さL_qは、[numerical formula]と計算される。数値計算例としては、M/M/S(∞)、M/D/S(∞)、D/M/S(∞)およびE2/E2/S(∞)を扱った。また、この方法は単一窓口(S=1)の場合にも有効なことを示した。
著者
木俣 昇
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-87, 1987-03
被引用文献数
1

われわれは、大震時避難計画のための情報システムとして、浜田らの経験的な延焼速度式に基礎を置く火災の延焼シミュレーション・システムの開発を行ってきた。このシステムは、メッシュ型の視覚的なシミュレーションであり、同時出火を取り扱うことができる。本論文では、このシステムの計画情報システムとしての検証を行っている。まず第一に、その実火災に対する再現性の検討を行い、福光大火の場合にも、酒田大火の場合にも、延焼の形状、延焼の速度ともに比較的良好な再現在を示すことを明らかにしている。第二に、本システムの出力を規定している要因の影響について検討している。要因としては、WD(風向)、WV(風速)、R(建ペイ率)。P(本造建物混成比)、β(防火木造率)、およびM(メッシュ・マップ)の6個とし、それぞれに2水準を設定し、直交表L_<16>(2^<15>)によるシミュレーション実験を実施し、分散分析を行っている。そして、木造建物混成比が最も重要な要因で、その寄与率は48。5%で、第二にはメッシュ・マップがきて、その寄与率は41。6%となっていること、風速は第三位の要因で、6。1%の寄与率をもつが、しかし、5%の水準でのみ有意となっていること、風向、建ペイ率、防火木造率は、5%水準でも有意とはなっていないことを明らかにしている。
著者
田村 隆善
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.101-113, 1987-03

性能の異なるm台の機械の段取りを1人の作業者が担当しているシステムにおいて、段取りの優先規則を操作して実現できる最大生産率の領域が、どのような性質を持つかについて検討する。最大生産率は、一部もしくは全ての機械でのジョブの待ち行列長さが無限のときのジョブのアウトプット・レイトと考えられるが、ここでは特に、全ての機械での待ち行列長さが無限のときに限定して解析を行う。この場合の生産率は、機械毎に故障率と修理率の異なる故障・修理モデルにおける単位時間当たり修理回数と見なすことができる。ここでは、加工時間と段取り時間は各々独立な指数分布で、それらは機械毎に異なった平均を持ち、割り込み優先は認めないと仮定される。本稿の主な目的は、優先規則を操作して実現できる生産率の領域が生産率ベクトル空間上の凸多面体となり、その頂点が確定的規則によるときの生産率からなること、ならびにその稜線が隣接した確定的規則を用いたときの生産率を結ぶ線分によって構成されること、を示すことである。
著者
河原 靖
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-98, 1982-06

ある市場において、競合する2つの会社が製品の広告を実施するにあたり、広告計画期問(たとえば1年)中の各期(たとえば各月)にどのように広告予算を配分するかの問題を2人零和ゲームとして取扱い、その解を求めた。ところで、ある期に配分された広告費の効果は、その期のみにあらわれるのではなく、その期が過ぎた後の期にも存続する。いわゆる繰越効果が存在するので、上の問題を解く際にこの効果を考慮に入れた。ただし、繰越効果の型としては次のようなものに限定した。すなわち、ある期に配分された広告費の大きさをaとしたとき、その期よりk期経過後の繰越効果はar^k(0≦r≦1)の大きさの広告費の効果に相当する。