著者
窪田 泰夫 森上 徹也 森上 純子 中井 浩三 横井 郁美 藤田 名都子 宗廣 明日香 前田 麗子 石川 絵美子 細川 洋一郎 小浦 綾子 米田 耕造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.432-438, 2012-08-01 (Released:2012-11-15)
参考文献数
7
被引用文献数
1

アトピー性皮膚炎 (AD) 患者を対象に標準的 AD 治療のひとつとしてスキンケアにビーソフテン® ローション (B) およびヒルドイド® ローション (H) を使用し,患部皮膚の角質水分量,経皮水分喪失量の推移,AD の皮膚症状に及ぼす影響を左右半身比較による検討を行った。両製剤の使用感や利便性に関する評価と満足度も検討した。両製剤とも4,8週後に皮膚症状は有意に改善し,製剤間に差はなかった。角質水分量,経皮水分喪失量については,治療前後および製剤間の差はなかった。Visual Analogue Scale (VAS) による評価では「皮膚のうるおい」,「皮膚のなめらかさ」,「患部皮膚の色調」では,両製剤とも4,8週後に有意に改善し,製剤間に差はなかった。「痒み」は4週後では両製剤とも有意な改善を認め,8週後では (H) のみが有意に改善したが,製剤間には差はなかった。薬剤使用感のVAS評価では,「薬剤塗布時の使用感」で (B) が有意に優れていたが,「塗りやすさ」,「薬剤塗布時のにおい」,「薬剤塗布した翌朝の皮膚の状態」,「薬剤の継続使用希望」は製剤間に有意差はなかった。AD 外用治療の基礎であるスキンケアにおける保湿剤の使用は皮膚炎の軽重にかかわらず長期にわたる。患者の好み,塗布範囲,季節,発汗などに応じた剤形選択がアドヒアランス向上をもたらし,高い治療効果や QOL の改善にも寄与するものと考えられた。
著者
中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

表皮のフィラグリン発現低下による皮膚バリア機能障害はアトピー性皮膚炎の原因である。我々はフィラグリン発現が低下したアトピー性皮膚炎モデルマウスでは皮膚バリア機能に重要なEGFR、E-cadherin、Occludinの発現が低下していることを発見した。抗酸化剤であるNアセチルシステインを同マウスに投与したところ、一部改善された。さらに、Nアセチルシステインをヒトアトピー性皮膚炎患者に外用したところ皮膚バリア機能は改善した。以上のことから酸化ストレスが角化と皮膚のバリア機能を低下させていることが示唆された。
著者
中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マクロファージは自然免疫の中心となる細胞である。我々はアトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージの活性化を調べた。アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚では通常マウスの皮膚と比べて異常なマクロファージの活性化がみられた。マウスのアトピー性皮膚炎の治療薬として、インターロイキン17Aの阻害薬を投与したところ、アトピー性皮膚炎モデルマウスの皮膚のマクロファージは通常皮膚のマクロファージとは違った活性化抑制がみられた。
著者
窪田 泰夫 宗広 明日香 小浦 綾子 白髭 由恵 横井 郁美 前田 麗子 石川 絵美子 細川 洋一郎 森上 純子 森上 徹也 中井 浩三 米田 耕造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.630-635, 2012-12-01 (Released:2013-02-26)
参考文献数
7

ダラシン® T ローション 1 %はざ瘡の炎症性皮疹に対して有効性と安全性が確認された外用抗菌剤である。今回,炎症性皮疹を有する成人ざ瘡患者 23 例に,ダラシン® T ローション 1 %を 8 週間,半顔には直接塗布により,また対側半顔にはコットンパフを用いて塗布し,炎症性皮疹の減少率と安全性,また刺激感や使用感等に対する患者自身による評価を比較検討した。その結果,コットンパフ使用法および直接塗布法ともに開始時と比較して外用開始 8 週後には炎症性皮疹減少率が有意に高かった。しかし両群間の炎症性皮疹の減少率において 4 週後,8 週後に有意差は認められなかった。全症例において特記すべき有害事象はなかった。患者自身による評価では,両群間の治療効果・使用感・刺激感に有意差は認められなかったが,70 % (16 例/23 例) の患者が「医師から具体的な塗布方法について説明を受けて良かった」と回答していた。これはざ瘡外用治療の際に医師が患者に外用方法の具体的な説明・指導をすることが患者の治療満足度を向上させるためにも重要であることを示唆していると思われた。また,液状のざ瘡外用治療薬とコットンパフを用いて塗布する方法は日常の化粧行動でコットンパフの使用に慣れている「大人の女性」のざ瘡患者には勧めやすいものと思われた。≥
著者
窪田 泰夫 森上 徹也 中井 浩三 横井 郁美 藤田 名都子 宗広 明日香 森上 純子 米田 耕造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.163-168, 2010-04-01 (Released:2010-06-25)
参考文献数
8

尋常性乾癬患者19例を対象に,カルシポトリオール軟膏(ドボネックス® 軟膏50μ/g)とベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏(アンテベート® 軟膏0.05%)を用いた9週間の外用連続療法を実施し,その臨床的有用性をPASIとVASスコア,患者QOLにより評価した。外用連続療法の導入期では両剤を1日2回併用塗布し,続く移行期では平日はカルシポトリオール軟膏のみを,土・日は両剤を1日2回併用した。維持期ではカルシポトリオール軟膏の単独塗布を行った。皮膚症状の評価はPASIスコアから顔面,頭部を除いた準PASIスコアと患者によるVAS評価を併用した。QOL評価はDermatology Life Quality Index(DLQI日本語版)を用いた。その結果,治療開始時20.2であった準PASIスコア平均値は導入終了時には8.1となり60%の低下を示し(p<0.01),その後も経時的に減少して,観察終了時には4.4に低下した(baselineから78%の低下,p<0.01)。また,治療開始時9.2であったDLQI合計スコアは観察終了時には3.1となり(p<0.01),下位尺度のうち「症状・感情」,「日常生活」,「余暇」での改善が顕著であった(p<0.01)。副作用については局所の刺激感,血清Ca値の異常変動などは認められなかった。尋常性乾癬に対する今回の外用連続療法は,皮膚症状を速やかに改善すると共にその後の寛解維持も良好で,主に精神面,生活および行動面での患者QOLの改善をもたらすことが示唆された。
著者
米田 耕造 窪田 泰夫 荒木 伸一 中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アトピー性皮膚炎は、掻痒の強い湿疹病変を主とする難治性皮膚疾患であり、フィラグリンタンパク質の遺伝子異常による。ロリクリンはフィラグリンと同様、表皮角層細胞の辺縁帯の主成分である。ロリクリン遺伝子の変異による疾患(亜型ボーウィンケル症候群)の臨床症状は、掌蹠角化症を合併した魚鱗癬であり、フィラグリン遺伝子機能喪失変異により生じる尋常性魚鱗癬の臨床症状に酷似している。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎の動物モデルを作製し、その病態に関与するロリクリンの果たす役割を解析し、創薬に役立てることである。その目的に向けてわれわれはロリクリンノックアウトマウスを作製した。