著者
中原 孫吉 麻生 健
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.83-88, 1968-12-31

以上のとおり風衡地帯では果樹の育成に当り防風施設が十分考慮される必要があることは千大園内の果樹園の柿樹が強風のためその樹形が正状の樹姿をせず歪んだ形をし,風下側に向ってなびいた姿をしていることでも分かるが,着花や結果の問題では風上側では着花さえ認められないので,結実を望むことは不可能の問題であって,わずかに数個の着花が第2図に示すように風下側で観察されたが,実際に結実しその後果実の肥大をみたのは数個しか得られなかった.松戸市高塚地区では,梨栽培の農家では長年間の経験に基づいて防風垣や防風林帯の方位を決定し,防風施設下で梨栽培に従事しておる.また,風害から果樹を保護し安定した経営に従事している.以上の報告から風当りの強い地域,いわゆる風衡地帯とよばれる地域の農園芸作物の栽培には是非とも防風施設は不可欠の要素であることを痛感した.なお,この研究は指標植物を利用して局地風の推定をする一連の研究の1つであることを付記し,また航空写真その他で世話になった松戸市役所松原課長,池上技師および畠山久尚博士をはじめ災害科学会研究気象部会の万々に謝意を表したい.
著者
中原 孫吉 野間 豊
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.93-98, 1972-12-25

わが国の果樹園は風衡地の傾斜地や砂丘地に植栽されている場合が少くないので,その防風施設の1資料として熱川暖地農場の風衡地の早生温州宮川系34年生の地上1m高の直径1.2cmの側枝に止め金を付けその水平面内の動揺を変位計で測り,昭和46年7月23日の記録をもとにして振動の幅やその周期を測定し第2表および第9,10図に示したが,強風時の動揺の振幅は弱風時のそれに対比すると劣ることは当然であり,地上1m高の側枝さえ約15cm位の幅でゆれるので上梢部ではさらに大きく振動するものと思われ,その結果着生した果実の動揺も大きく互いの衝撃によって損傷することは当然の結果と思われるが,その割合は風上側に多く,風下側に少いことが立証されたわけである.われわれは風衡地の果樹園で防風施設が当然必要なことはいうまでもないが,その一資料の立証ができるものと思われる.