著者
中垣 通彦 松本 龍介 堀江 知義
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究では、高自由度の挙動が可能な人工筋肉を実現させるため、微小アクチュエータを駆動要素とする知的複合材料の創成を目的とする。知的複合材料を構成する機能性材料として形状記憶合金、ピエゾ素子、イオン交換樹脂、液晶などが挙げられるが、後二者は出力が小さい。一方、前二者は比較的高出力を引き出す事が可能であり、実際に駆動素子として利用されている。ここでは駆動力の大きい形状記憶合金およびピエゾ材料を駆動材料として利用する。一般の駆動素子では、駆動の自由度は1自由度であり、それらを組み合わせたとしても数自由度に留まる。本研究では人工筋肉体に高自由度性を持たせるため、駆動素子を繊維化し、その体積分率と配向性を任意に分布させた柔軟複合材料として考えた。現在では機能材料素子そのままの発生ひずみは0.3%程度に留まり、生体筋肉などの100%近いひずみを発生させるには到底及ばない。本課題のもう一つの重要な要素としてひずみ増幅方法を考案する事が必須である。そこで本研究者らの構想である駆動素子を用いたユニモルフ/バイモルフばねを用いた。数値計算モデルによれば、ピエゾひずみの数十倍のばねひずみを発生させる事が可能となる。これにより自由度が高く大ひずみを発生する人工筋肉の構築が可能となった。本研究で最適な人工筋肉の設計が可能となる解析計算システムを開発した。これにより人工筋肉の創成のための労力、時間と予算を大幅に削除し、最適な材料仕様を決定する事が出来る。ソフトウェア本体には、知的複合材料のモデルを構築するために、微小なバイモルフ/ユニモルフばね素子を任意の体積分率と配向をもって分散させる事を可能とする、SCC-LRM粒子分散構成則モデルを用いた。本システムを用いて、より生体のシステムに近く血栓の発生の可能性が低い脈動収縮型の人工駆動動脈め基本動作の挙動を計算力学的に実施して示した。本研究の結果と関連する研究成果を国内外の学会において発表した。