著者
釘原 直樹
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は野球や相撲のようなプロスポーツや緊急事態における抜きつ抜かれつの競争が集団成員の行動や動機づけに与える効果について検討した。従来、社会的促進に関する研究において、他者の存在は十分学習された容易な課題に関してはパフォーマンスを上昇せしめることが明らかにされてきた。しかしアメリカ大リ-グのワールドシリーズのデータの分析結果はこの知見と反するものであった。優勝がかかった第7試合では第1、2試合に比べて、優勝を期待するホームの観客の前でエラーの数が多くなり、また勝率も低下するhome choke現象が存在することが示された。本研究では日本のプロ野球でもこの様な現象が存在するか否かについて検討した。1951年から1997年までの日本シリーズのデータを分析対象とした。分析の結果、レギュラーシ-ズンとシリーズを通してホームアドバンテージの効果は日本より米国の方が大であることが明らかになった。シリーズの全ての試合で日本のホームチームの勝率が米国より高いのは第5戦のみである。このことは日本の場合はシリーズ全体がhome chokeの傾向があることが示唆された。エラーの発生率も第1,2戦より第7戦の方が多くなる傾向が伺えた。平成8年6月13日に発生したインドネシア・ガル-ダ航空機離陸失敗炎上事故について検討した。乗客260名のうち219名のデータが得られた。調査の結果次のことが明らかになった。1)発災直後の乗客の反応の特徴は動かない「凍結」状態である。2)次が混乱と狼狽の段階である。悲鳴と怒声が飛び交い、一時は非常口に沢山の人が殺到して身動きが出来ない状態になった。3)他者に同調する傾向が見られた。4)荷物や脱出口に対する固着傾向が強くなった。5)乗客の中から「大丈夫だ、落ち着け」等を複数の他者に向かって発言したリーダーが18名(16名が男性)ほど機体後部で集中して発生した。6)乗客間での助け合いや声の掛け合いがあった。特に損壊が激しい機体最後部では一人の男性乗客が5〜6名もの人の脱出の手助けをした。
著者
荒川 等
出版者
九州工業大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

少子高齢化という深刻な問題を抱える日本の近い将来、高齢者は介護者不足のため電動車椅子や電動カートを用いた単独移動を強いられ、それらに関連する交通事故が多発することが懸念される。従って、このような事態に備えるべく、報告者がこれまで開発した歩行者用事故記録機(ウォークレコーダー)を電動車椅子に転用することで交通事故分析のための電動車椅子用ドライブレコーダーを発案して評価用試作機を製作した。電動車椅子にはヤマハ発動機(株)・JWアクティブを採用して、ドライブレコーダーを設置するために弱冠の改造を施した。基本的にウォークレコーダーの機能は全て継承しているので、(1)全方位カメラ、(2)車載用カメラ、(3)Webカメラの3方式のいずれかによる周囲の景観の撮影と種々センサによる運動状況の記録をするためのドライブレコーダーとして試用し、メッセンジャーを利用して遠隔地の保護者へ車椅子の状況を実況中継することも可能である。取り分け、(3)のシステムにUSBデバイスサーバーとSSDを用いる改良を加えたところ、画像記録速度が約0-8FPSから64FPS、全方位画像の更新時間が5秒から0.06秒へと100倍程度の飛躍的な向上が見られた。従って、カメラの特徴や価格を考慮すると(3)の方式が実用化に向けて優位となった。また、製造元より技術情報を入手して電動車椅子の操作レバーの操作量を強制的に補正したり、操作量の推移をパソコンに記録する機能を新たに開発した。現在、電動車椅子・電動カートのためのドライブレコーダーの試作機は完成したといえ、電動車椅子の習練を兼ねて安全確認のための試験運転を行っている。今後は、(3)の方式を中心に路上での実証実験を行いながら、車椅子の周囲の景観の画像や運動情報から危険状況を認識するアルゴリズムの開発を行い、車椅子の自動停止や緊急機関に通報するシステムへ発展させる予定である。
著者
山川 烈 鈴木 倫保 山川 俊貴 粟生 修司 石塚 智 堀尾 恵一 藤井 正美 野村 貞宏 大和田 祐二 グレゴリエビッチ ジミン・レフ 常盤 達司 井上 貴雄 丸田 雄一 藤岡 裕士
出版者
九州工業大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

抗てんかん薬が全く効かず,いつ発現するかわからない発作の恐怖におびえているてんかん患者が国内外に全人口の約0. 2%いる.これらの患者を救う道は,外科手術である.現在の外科手術では,「てんかん原性域」と呼ばれる発作の震源地の位置を脳波から推定し,それを切除しているが,後遺障害のリスクが大きい.本研究では,その「てんかん原性域」を精度よく推定し,頭蓋骨にあけた小さな穴から凍結プローブやレーザー焼灼プローブを刺入し,「てんかん原性域」を限定して破壊する後遺障害リスクの少ない外科手術法を考案した.
著者
粟生 修司 大村 実 大嶋 雄治 長谷川 健 河合 啓介 片渕 俊彦
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ビスフェノールAやトリブチルスズの周産期や胎生期曝露の行動の性分化に及ぼす影響を調べた。探索行動の性差は周産期間曝露と同様に消失した。強制水泳試験では、ストレス対処行動の指標であるstruggling時間の性差(雌>雄)が、出産前1週間曝露で消失した。うつ反応の指標であるimmobility時間は、対照群および曝露群ともに性差はなかったが、ビスフェノールA曝露群で有意に延長した。本研究により、内分泌撹乱物質が、探索行動、ストレス対処行動、青斑核、扁桃体内側核領域の喚覚応答の性差を消失させることが明らかになった。さらに、ビスフェノールAがうつおよび不安を増強し、捕食者のニオイに対する警戒応答を増強することを見い出した。2)みどりの香りのストレス応答に対する作用を調べた。捕食者のニオイに曝露した時には、みどりの香りは高架十字迷路試験において総移動距離、平均移動速度を増加させ、活動性を上げた。心理的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の飲水量をみどりの香りが著しく減らしていた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。身体的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の摂食量および飲水量は減少していた。さらに翌々日の摂食量および飲水量も減少していた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。以上のことからみどりの香りは、活動性を上昇すること、摂食、飲水量をストレス強度に依存して抑制することがわかった。3)内界環境に応じて変動する摂食調節物質であるオレキシンA、レプチン、2-buten-4-olideが摂食行動だけでなく、学習記憶機能を調節する作用を示すことを水迷路試験や海馬長期増強試験で明らかにした。
著者
西野 和典 高橋 参吉 大倉 孝昭 大西 淑雅 山口 真之介
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

高校教科「情報」担当教員が専門的な知識や技能を得て、実践的な授業スキルを身につけるためのe-ラーニング教材を開発する。そのために、大学の教科「情報」の教職課程科目の授業内容をe-ラーニング教材にして、現職教員が働きながら学ぶことができる環境を実現する。また、インターネットを活用して遠隔から授業を評価するシステムを構築し、ベテラン教員から授業改善について指導を受け、相互評価を行い教科「情報」の授業のスキルアップを行う。
著者
水落 文夫
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2018-03-23

九州工業大学博士学位論文 学位記番号:生工博甲第321号 学位授与年月日:平成30年3月23日
著者
永野 航太郎
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2022-03-25

九州工業大学博士学位論文 学位記番号: 情工博甲第364号 学位授与年月日: 令和4年3月25日
著者
那須野 悟
出版者
九州工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

気体放電現象は真空度や放電管の形状等によりじつに多彩な放電パターンを呈することが知られている。非常に古くから知られている例としては、グロー放電にみられる縞状の明暗パターン(striations)がある。これらの縞模様は陽光柱と呼ばれる空間領域に電荷の流れ方向に沿って現れ、定存波的なものと進行波的なものとがあることが知られている。また現れるパターンは電荷の流れの方向ばかりではなく、電荷の流れと垂直方向にも縞状や六角状の空間パターンが形成されることが最近確認されている。このように気体放電系は、多彩な時空構造を自己組織するパターン形成系として非常に魅力的な物理系であるが、これらの時空構造が如何にして自己組織的に形成されるかという物理的メカニズムについては未だ完全には解明されていなかった。本研究ではまず流れに沿った方向の時空パターン形成現象とそのダイナミクスに焦点を絞り実験的研究を行い、その結果以下のことが明らかとなった。(1)気圧、放電電流等の制御パラメータに対して相図の作成を行い、どのような条件でstriationあるいはその他のパターンが現れるのか調べた。striationは混合分子ガス、純粋分子ガス(窒素)、希ガスのいずれでも生じることが明らかとなった。(2)窒素では非常に空間的に一様なstriationが生じるのに対して、混合分子ガスや希ガスではstriationの明暗のコントラストが陽光柱の陰極側から陽極側にいくにしたがい指数関数的減衰を示す。(3)各気体においてstriationの空間周期は与えられた制御パラメータに対して唯一決まる。(4)striationの間隔は、放電電流とともに増加し、気圧に対してはべき的依存をすることが明らかとなった。さらに、各気体に対するべき指数の定量的結果を得ることができた。(5)また、現在測定した時系列データからリアプノフ指数スペクトラム求めることにより系の動的安定性の解析を行っている最中である。分岐のタイプに関する詳細な測定も進行中である。
著者
Ruxton Ian
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2007-04

平成17年度-平成18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書:3分冊
著者
矢田 智春
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

九州工業大学博士学位論文 学位記番号:生工博甲第337号 学位授与年月日:平成31年3月25日
著者
萩原 勇人
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2016-03

九州工業大学博士学位論文 学位記番号:工博甲第419号 学位授与年月日:平成28年3月25日
著者
江木 鶴子
出版者
九州工業大学
巻号頁・発行日
2009

九州工業大学博士学位論文(要旨) 学位記番号:情工博甲第225号 学位授与年月日:平成21年6月30日
著者
古川 徹生
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

高次の知識を得るための階層的学習法に関する研究を行った.第1次階層での学習は,個々のケースにおけるデータを学び,モデル化を行う.第2次学習では1次学習の結果をデータとみなして,すべてのケースに共通する普遍モデル,すなわち高次知識を得る.この学習タスクはテンソル方程式で書くことを見出し,自己組織化写像 (SOM) の階層構造で解けることを見出した.さらに多視点的データ解析を可能にするテンソルSOMを開発し,その有効性を示した.
著者
中村 豊
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、ネットワーク管理・運営の補助のため過去に蓄積したトラヒックを解析することで異常トラヒックを検出することを目的とする。過去に蓄積したフロー情報を解析し、周期性を抽出し、その周期に基づいた統計処理により確率分布を算出する。フロー情報を用いることによりトラヒック量だけでなく特定ホストに対する解析といった、これまでにない柔軟なトラヒック解析が可能となる。本システムを用いることで、明示的な閾値の設定なしに「転送バイト量・パケット数の変化から通信障害・帯域の圧迫」「平均転送量のホストごとの分散の変化から一部のユーザによる帯域の独占」「平均パケット長の変化からDDoS攻撃の発生」「単位時間当たりのユニークな通信相手先数の変化からワームによる攻撃の発生」と言った事を検出することが可能となる。平成18年度では平成17年度で構築されたシステムを実際の運用サイトに適用し、評価を行った。また、ネットワークに流れるトラヒックからデータを収集し、蓄積・解析・視覚化の一連のデータの流れを構築した。さらに、異なる複数の解析アルゴリズムを実装し、それらの比較評価を行った。これらを以下のような手順で推進した。1.実際のサイトに適用する本学(九州工業大学)のキャンパスネットワークに本提案システムを適用し、実環境において提案システムの有用性を評価した。2.解析アルゴリズムの評価複数の解析アルゴリズムをモジュールとして実装し、それらの比較評価を行った。評価方法に関しては、実運用と連携し、最もfalse positiveの低いアルゴリズムが何であるかを検討した。
著者
春山 哲也 村上 直也
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

100余年にわたって工業的なアンモニア合成を担ってきたHaber Bosch processであるが、近年の地球温暖化の進行や、潜在的エネルギー危機などの社会課題が顕在化する中で、その時代の要請に適合するために変革が求められる課題が浮かび上がってきている。それは、1.小規模化・軽便化、2.再生可能原料および再生可能エネルギーでの生産化、3.発停自在なオンディマンド生産適合化、この3課題である。以上の課題を解決すべく、Green Ammonia challenge研究という分野が出来、世界の研究者が鎬を削っている。低エネルギーかつ小中規模で発停容易のアンモニア製造技術の確立は、需要地生産可能な中小規模でのアンモニア生産を可能にする。その実現は、低製造エネルギー消費・低二酸化炭素排出に繋がり、また需要地生産は、ノンロジテックによる無運搬エネルギー消費・無運搬二酸化炭素排出をも実現し得る。しかし、それが実現されるためには、製造原料から異なる大きなゲームチェンジが必要である。我々は、水素ガスを必要とせず、空気と水だけを直接原料とし、窒素と水から成る異相界面を反応場として、常温・常圧の一段階反応で窒素固定を行う「相界面反応」を独自に見出した。相界面反応は、水による気体の無触媒還元反応であるということができる。これは、水相表面に存在する特異な水分子の状態に着目したことによって想を得た反応である。水相表面には、水素結合を形成していない水分子が存在する。この水相最表面の水分子の水素原子を、放電により活性化(励起と解離がある)された活性化窒素が引き抜き還元され、アンモニアが生成され水中に溶存する。前年度までに、我々が新たに構築した窒素プラズマを誘電体バリア放電が、効率よく窒素を活性化できていることを実証することに成功した。