著者
坂本 快郎 市村 隆也 水流添 周 中尾 光善
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.137-143, 2005-03-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

老化はヒトを含む全ての生物に共通した生命現象であるとともに, 多くの疾患や病態の発生と関わっている. 近年, DNAメチル化とクロマチンをはじめとするエピジェネティクスの研究が進展して,細胞の老化現象とも密接に関わることが明らかになってきた. 加齢とともにDNAメチル化パターンが徐々に変化する事実からも, 癌や自己免疫疾患, 代謝病, 神経疾患等の発症機序との相関性が注目されている. DNAメチル化検査は技術的に確立されており, 癌の早期診断, 治療薬剤の選択や予後因子に適用されている. さらに, エピジェネティクスを標的とする薬剤開発 (エピジェネティック治療) が提唱されており, 疾患の予防や治療に貢献できる可能性が高まりつつある.
著者
佐々木 裕之 中尾 光善
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

エピゲノムは細胞のエピジェネティックな修飾の総体であり、発生・分化・がん等において重要な働きをする。網羅的・体系的なエピゲノム解析基盤を確立する目的で研究を行い、(1)独自のメチル化DNA濃縮ツールを開発し、(2)マウスの細胞を用いて網羅的解析技術を確立し、(3)この方法をヒト培養細胞や健常者・各種疾患由来の細胞に応用した。これにより、(4)様々なクロマチン因子の相互作用や標的配列を同定することに成功し、(5)ヒト・チンパンジー間のDNAメチル化の差を同定し、エピジェネティクスの制御機構や多様性・進化との関わりを研究する基盤を確立した。