著者
中尾 有岐 セーントーンスック プラパー
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.13, pp.101-116, 2017

『あきこと友だち』は、タイ中等教育向けに作成された初級教科書である。本稿では2017年出版予定の改訂版について、その方針や改訂点、試用の結果などについて報告する。改訂版ではコミュニケーション能力向上を目指すことを基本方針とし、「どんなばめん?」という課の目標場面を示し、ターゲットの語彙や文型に気づかせる聴解練習を追加した。他には、何ができるようになったかを意識させるために、目標を具体的な説明に書き換えたり、Can-do チェックを設けたりした。さらに、学習者が個人やグループで推測や分析、調査などの考える練習を追加し、協働する機会を増やした。「どんなばめん?」の試用結果では、学習者からは「頭を使う練習だから面白い」、「語彙・文法がわかった」、教師からは「生徒の動機づけになる」、「使いやすい」、「導入の時間が節約できた」など肯定的な反応を得た。
著者
中尾 有岐
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 = The Japan Foundation Japanese-Language Education Bulletin (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.15, pp.7-22, 2019-03

グローバル時代の社会では、多様な人々が英知を出し合い、新たな知を共に創ることを目的とした「共創型対話」が重要な役割を果たすと考えられる(多田 2016)。本稿では、共通言語が初級で多国籍の学習者集団において「共創型対話」は生まれたのかを、「にほんご人フォーラム2017生徒プログラム」の実践から検証する。実践デザインは、日本の学校教育の実践から得られた共創型対話を引き出すための教師の手立てと日本語教育の実践から得られた多国籍集団における困難点を踏まえて行った。その結果、最終課題を考える対話のプロセスから「共創型対話」が観察され、具体的な対話からは、共創型対話の姿勢や態度が観察された。また、ふり返りの記述から、言語能力が初級の生徒も共創型対話に貢献したという意識を持ったり、自己成長を感じたりしていることがわかった。引率スタッフや各国の教師のアンケートからも生徒の成長が示されていた。