著者
吉川 和寛 矢坂 健 諸岡 瑞穂 伊藤 貞利 小山 純司 後藤 泰二郎 中屋 来哉 渡辺 道雄 相馬 淳
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.387-393, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
16

糖尿病性末期腎不全で血液透析 (HD) 歴10数年の50歳代男性. 10年来の甲状腺腫 (6cm大) に対し甲状腺右葉切除を行い, 濾胞腺腫と診断された. しかし術後8か月のCTと骨シンチで多発骨転移が発見されたため, 濾胞癌と最終診断した. 右大腿骨転移部の疼痛に対し外照射と髄内釘を挿入し, 第11胸椎骨転移による高度脊髄圧迫に対し外照射と後方除圧固定術を施行した. その後放射性ヨウ素 (I-131) 内用療法を検討したが, 療法後約1週間は患者とその排泄物および透析排液により放射線第三者被曝が生じるため, 患者は個室隔離され, 透析室にも入室できないことが判明した. そのため, 内用療法を行うためにはHDを中断せざるを得ず, 事前に腹膜透析 (PD) に移行して対応した. 透析患者の甲状腺分化癌に対するI-131内用療法に関する報告は, 本邦では皆無であり, HDからPDへ移行する理由の一つとして認識される必要があると考えられた.

1 0 0 0 OA V.膜性腎症

著者
西脇 宏樹 清水 さやか 中屋 来哉 柴垣 有吾 祖父江 理
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.910-916, 2020-05-10 (Released:2021-05-10)
参考文献数
21

膜性腎症は,成人の原発性ネフローゼ症候群で最も頻度の高い疾患である.近年,膜性腎症の抗原として,phospholipase A2 receptor(PLA2R),thrombospondin type-1 domain-containing 7A(THSD7A)ならびにneural epidermal growth factor-like 1(NELL-1)等が報告されており,特にPLA2Rについては,その抗体による新規診断方法等が検討されている.一方で,本邦のPLA2Rの頻度は欧米の報告とは異なることも示唆されている.治療については,2020年に改訂が行われる本邦の診療ガイドラインと2019年に発表されたリツキシマブに関する研究を本稿では紹介する.