著者
中山 伸樹
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.395-414, 2008-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
31

政府の新自由主義的な大学政策のために,今日の日本の大学は深刻な危機に直面しつつあり,学生の質の変化が進む中,よりいっそうの大学教育改善の努力が求められる.社会学教育は,大学進学率の上昇にともなって拡大し,1991年の大学設置基準大綱化以降,各大学で学部・学科の再編が進んだ.『学校基本調査報告書』でみる限り,「社会学関係」の学生数・占有率ともに上昇しているが,その結果,社会学中心学科が拡大しているとはいいきれない.大綱化以降,学科名称は急増し,「大学改革」の迷走ぶりを象徴しつつ,『学校基本調査報告書』の学科分類は破綻してしまった.本稿は,社会学をプロフェッションとしてとらえることの意義,社会学プロフェッションが大学ルートと学会ルートの重なりと区別という形で存在することを主張し,一般国民や政府・財界との関係や社会学分野の課題を示し,大学ルートの集約の場,大学ルートと学会ルートの調整の場がないことを指摘している.本稿はまた,学生と教員の間,教員と同僚の間,教育役割と研究役割の間の「3つのアパルトヘイト」論を紹介し,教育と研究は構造と作動原理がかなり異なる点に教育改革が困難である理由を見,社会学教育の改革のためには「アパルトヘイトの打破」「理念・目的・目標の明確化」「社会学の社会的機能への目配り」を通じて実質合理性を高めることが重要であると指摘している.