著者
中山 大成 長谷川 和範
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1-2, pp.19-26, 2016-04-13 (Released:2016-04-15)
参考文献数
12

沖縄県恩納村瀬良垣から金城浩之氏によって採集された日本産イトカケガイ科の1種をイボヤギヤドリイトカケ属(新称)Epidendrium A. & E. Gittenberger, 2005の新種として記載する。また,本種の属位を決定するにあたり,従来北西太平洋でAlora属に含められていた近似種と比較するとともに,それらの属位についても見直しを行った。Epidendrium parvitrochoides Nakayama n. sp. エンスイイトカケ(新種・新称)(Figs 8–10)殻長は3~5 mmの小型で薄く,円錐形。茶褐色。各層に胎殻は平滑で円筒形,体層,次体層とも下方に角張るが底盤を形成しない。次体層は6層内外で,殻表は縦肋と螺肋が交差し格子状の彫刻をなす。殻口は四角く外唇薄く著しい張り出しにはならない。臍孔は大きく開く。タイプ標本:ホロタイプ,殻長 5.8 mm; 殻径4.0 mm,NSMT-Mo 77925;パラタイプ1,殻長4.8 mm; 殻径 3.1 mm, NSMT-Mo 77924;パラタイプ2,殻長4.3 mm; 殻径 2.8 mm,NSMT-Mo 77923。タイプ産地:沖縄県恩納村瀬良垣,水深20~25 m。分布:タイプ産地のみからしか知られていない。付記:Epidendriumイボヤギヤドリイトカケ属(新称)はE. sordidum A. & E. Gittenberger, 2005ヒロベソイボヤギヤドリイトカケ(新称)をタイプ種としてGittenberger & Gittenberger(2005)によって創設され,従来Alora属とされていた種の幾つかがここに移された。後にGittenberger & Gittenberger(2012)はAlora属とEpidondrium属の違いについて改めて議論し,遺伝子配列の比較から系統的に隔たったものであることを示した。殻の形態では両者の区別はやや困難であるが,貝殻の全般的な形状や殻質などの違いによって区別が可能であると考えられる。これらの形質に基づいて,日本産の従来Alora属に含められていた種を再検討した結果,まず土田(2000)や Nakayama(2003)によってAlora billeeana(DuShane & Bratcher, 1965)イボヤギヤドリイトカケとして図示された種はE. aureum A. & E. Gittenbereger, 2005(Figs 1–2)に訂正される。この種と同時に記載されたヒロベソイボヤギヤドリイトカケも今回初めて沖縄から産出が確認された。E. reticulatum(Habe, 1962)センナリスナギンチャクイトカケは,貝殻の形態から本属に含めたが,本属の知られているすべての種がイボヤギ類に着生する(Gittenberger & Gittenberger, 2005)のに対して,本種はヒドロ虫類のセンナリスナギンチャクに付着する(Habe, 1962)ことから,今後の詳しい検討が必要である。Alora annulata (Kuroda & Ito, 1961)テラマチイトカケは寄主などの情報が不明であるが,原殻の形態的特徴と近年の他の文献等に倣い暫定的にAlora属に残す。Alora kiiensis Nakayama, 2000キイテラマチイトカケは明らかに異旋する大型の原殻をもつことなどから,タクミニナ科のTuba属に移される。本新種はE. billeeanumやイボヤギヤドリイトカケよりも小型で,螺層が角張りを持ち,殻口が方形であることで明瞭に異なる。ヒロベソイボヤギヤドリイトカケとは縫合が浅く,彫刻が弱いことで区別される。センナリスナギンチャクイトカケは殻形が最も近似するが,周縁が丸く,螺肋がより強くて数が少なく,格子状の彫刻を示すことで区別される。
著者
中山 大成
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.46-48, 2012

和歌山県立自然史博物館に所蔵されている永井誠二氏のコレクション中の不詳種を検討中に見出された日本産イトカケガイ科の1新種を記載する。なお同種は同博物館に寄贈された小山安夫氏のコレクションにも見出された。Opalia calyx n. sp. ウテナイトカケガイ(新種,新称)殻は10~12 mmの小型で厚く,尖塔形。灰白色。各層に不規則な縦張肋をなす。胎殻は平滑で円錐形,浸蝕されていることが多い,体層は弱い底盤を形成する。次体層は9層内外で,殻表は繊細な微穴からなる螺列と非常に弱い縦肋を持ち縦肋は直上の縫合を蕚状に覆う。殻口は2重,楕円形で外唇厚くなるが著しい張り出しにはならない。タイプ標本:ホロタイプ,殻高 10.3 mm; 殻径3.5 mm(WMNH-Mo-Na-46);パラタイプ1,殻高10.0 mm,殻径 3.2 mm(WMNH-Mo-Na47);パラタイプ2,殻高11.0 mm,殻径 4.0 mm(WMNHMo-Ko-1)。タイプ産地:和歌山県串本町沖,水深160 m。分布:紀伊半島沖水深80~160 m。比較:本種に最も近似するカタイトカケガイOpalia levis Nakayama, 2010は体層に明瞭な底盤をもつが,本種は底盤が不明瞭,また本種では縫合まで伸びる縦肋が蕚(うてな)状に覆うことが大きく異なる。本種の和名はこの特徴により命名した。
著者
中山 大成
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.251-254, 1988-12-15

A new species, Morula pacifica is described. Although this new species has been confused with species of the Fasciolariidae, radular character indicates that this species belongs to the Muricidae. This new species is characterized by the prominent spiral sculpture. The shell is grayish or yellowish white.