著者
岡部 洋一 中山 明芳 北川 学
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

酸化物高温超伝導体は、従来の超伝導体と比較し使用温度が高く、また,ギャップエネルギーが10倍程度高いため、それに比例した高速性が期待されている。また、バンドギャップが大きいため、半導体との整合性にも期待がかけられている。本研究はこうした高温超伝導体エレクトロニクス応用の基本技術となるトンネル形ジョセフソン素子を集積回路技術により作成することを目的としている。電子デバイスのような、微細あるいは薄い構造を取り扱うには、薄膜の平坦性、および作成温度の低温化が達成される必要がある。このため、この両方を改善するためにacおよびrfスパッタ法を改良した。具体的には導入酸素の紫外線による活性化、試料とターゲットの位置関係の最適化、および各電極にバイアスをかけることである。この結果、最高プロセス温度500度程度で薄膜を作成できるようになった。また、下部電極となるYBCOのみならず、上部電極のYBCOについても十分な特性の薄膜を作成できるようになった。トンネル型ジョセフソン素子を完成するためには、数nmのごく薄い均質な絶縁膜を作成することが必要である。このため、MgOを中心としていくつかの材料を検討した。まず、我々の従来の研究成果であるYBCO/Au/絶縁体/Nbの構造のものを検討し、下部電極をBSCCOとしても、ジョセフソン特性が観測できることを、直流特性、高周波特性、磁界依存性の三つの方法で確認した。その後、上下とも高温超導体であるジョセフソン素子の検討を開始した。その結果、高温超伝導体上に絶縁体を付けると、多くの場合、島状構造をとり、均質な膜がえにくいことが判明した。この他にも多くの素子構造を検討している。現在のところ、進行状況は、当初予定よりもかなり早いが、一方で研究をもっと原理的な方向に展開する必要があることも感じつつある。