著者
中山 美津子 桑原 豊子 中山 喜代子
出版者
高知学園短期大学
雑誌
高知学園短期大学紀要 (ISSN:03894088)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.551-564, 1990-09-30

モロヘイヤは, シナノキ科コルコラス属に属する北アフリカ原産の植物で, 葉は青しそに似た形で, 葉を刻むとドロリとした粘りがでる.今回は, 高知県南国市で数年前より新しく栽培されている, モロヘイヤを試料として各種成分含有量を測定し, その分布型の決定を試みると共にこれらの成分の特性値を求めた.ついで栽培別および部位別による各種成分含有量の変動, さらに各種元素間の相関関係について検討した.特に最近, 亜鉛の不足による味覚の障害が取り沙汰されていることもあり, 今回は亜鉛と銅の測定を加え, 合わせてこれらの相関関係についても調べた.(1)モロヘイヤの無機成分, 水分およびビタミンC含有量の分布型決定の結果, ハウス, 露地栽培共に, カルシウム, リン, 鉄, カリウム, マグネシウム, 窒素, 水分およびビタミンCは正規分布し, ナトリウム, 亜鉛および銅は対数正規分布を示した.モロヘイヤのカルシウム, 鉄, およびビタミンC含有量は他の緑黄色野菜に比べて比較的高かった.(2)ハウス栽培と露地栽培の比較では, 水分はハウス物に多く, カルシウム, 鉄, ナトリウム, マグネシウム, 銅, 窒素およびビタミンCは露地物に多かった.(3)葉と茎を比較した結果, 葉にカルシウム, リン, 鉄, 亜鉛および銅が多かった.(4)元素間の相関関係については, 窒素, リン, カリウム間では窒素とリン間のみに正の相関がみられた.亜鉛, 銅と各元素間については, 全試料では, 窒素と銅, カルシウムと銅!ナトリウムと銅間に正の相関関係が見られ, ハウス物に鉄と亜鉛, 鉄と銅, ナトリウムと銅間, 露地物にカリウムと亜鉛, 銅と亜鉛間に正の相関関係が見られた.従って, 亜鉛についてはマグネシウム間に負の傾向が, カリウム間に, 正の相関が見られた.銅については, 窒素間, カルシウム間, ナトリウム間に正の相関が見られた.又, 銅と亜鉛間では, 正の相関が見られた.(5)煮る, 操作については, 無機成分の経時的変化を調べた結果, 水より煮出すより, 沸騰水で煮出す方が無機成分は良く溶出し, 2分間経過でカリウム, ナトリウムは約25%の溶出を見た.(6)基本的調理操作を施し, 無機成分量の損失を調べた結果, 茄でる操作は損失が大きく, 次いで蒸すであった.官能検査の結果, 総合的に好ましい調理操作の順位は, (1)妙める(2)茄でる(3)蒸す(4)生の順であった.
著者
中山 美津子
出版者
高知学園短期大学
雑誌
高知学園短期大学紀要 (ISSN:03894088)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.723-736, 1992-11-30

今回は, オレンジの輸入自由化に伴い, 多くの問題をかかえている国内産の柑橘類を取り上げた.柑橘類の中では代表的なうんしゅうみかんとあまなつみかんを試料として, 主なる無機成分および水分含有量を測定し, その分布型の決定を試みると共に, それらの成分の特性値を求め, ついで地域別, 品種別さらに各種元素間の相関関係について検討した.酸, アルカリ処理によるじょうのう膜除去の水洗い実験に次いでビタミンCの耐熱性についても調べた.加工品として代表的なジュースについて官能検査も行った.(1)うんしゅうみかん, あまなつみかん共に, カルシウム, リン, カリウム, マグネシウムおよび水分は正規分布し, .鉄, ナトリウム, 亜鉛および銅は対数正規分布を示した.(2)うんしゅうみかんの高知県山北産と高岡産の比較では, カルシウム, ナトリウム, カリウム, マグネシウムおよび銅は, 山北産に多く, リン, 亜鉛および水分は高岡産に多かった.(3)あまなつみかんのカルシウム, リンおよびマグネシウムは熊本県産に多く, 鉄, ナトリウム, カリウム, 亜鉛および銅は愛媛県産に多かった.(4)うんしゅうみかんとあまなつみんかを比較した結果, カルシウムはうんしゅうみかんに多く, あまなつみかんの2倍含まれ, その他の成分はあまなつみかんに多かった.(5)元素間の相関関係については, 窒素とリン間にうんしゅうみかん全体, カリウムとリン間に, うんしゅうみかんの高岡産, あまなつみかんの全体に正の相関関係が見られた.マグネシウムとリン間に, うんしゅうみかんの高岡産, あまなつみかん全体に正の相関関係が兄られた.ナトリウムとカルシウムの間であまなつみかん全体に強い負の相関関係が見られた.カリウム, カルシウム間ではうんしゅうみかん全体と, 高岡産に正の相関関係が見られた.カリウムとマグネシウムに全体の試料に正の相関関係が見られた.うんしゅうみかんでは, 銅とナトリウム問に全体と高岡産に正の相関関係が兄られた.あまなつみかんでは, 亜鉛とリン, 銅と鉄, 銅とカリウム間を除く他の成分間で全体に正の相関関係が見られた.亜鉛とナトリウム, 銅とナトリウム間に高知産および熊本産に正の相関関係が見られた.その他高知県産は銅とカリウム間に正の相関関係が見られた.愛媛炭には亜鉛と鉄間に正の相関関係が見られた.あまなつみかんの全体と高知県産にリンと糖間に正の相関関係が見られた.(6)化学処理後の水洗いによる無機成分量の経時的変化を調べた結果, うんしゅうみかんではリン, カリウムおよびマグネシウムは処理による溶出はほとんどなく, その後の水洗いによる溶出もほとんどなかった.亜鉛においては処理による溶出は, 23%で, その後水洗いによる溶出は80分で約37%減少した.銅においては処理による溶出は, 24%で, その後水洗いによる溶出は80分で約57%減少した.ナトリウムは化学処理後急激な増大が見られたがその後の水洗いにより徐々に溶出した.あまなつみかんではマグネシウムは処理による溶出はほんどなく, その後の水洗いにより徐々に溶出した.リンおよびカリウムにおいては, 処理による溶出は10%で, その後の水洗いにより徐々に溶出した.亜鉛においては処理による溶出は42%で, その後水洗いによる溶出はほとんどなかった.銅においては処理による溶出は, 28%で, その後水洗いによる溶出はほとんどなかった.ナトリウムは化学処理後急激な増大が見られたがその後の水洗いにより徐々に溶出した.(7)うんしゅうみかんおよびあまなつみかんは98℃, 40分間の加熱で約20%のビタミンC量が損失した.化学処理後98℃, 40分間の加熱で約17〜24%のビタミンC量が損失した.(8)うんしゅうみかんとバレンシアオレンジを使用して, 混合割合の違うジュースを作り嗜好調査を行った.総合的に好ましい順位は, うんしゅうみかん対バレンシアオレンジの割合が(1)90 : 10(2)100 : 0(3)75 : 25(4)50 : 50の順であった。