著者
中島 猛 伊澤 昌江 竹内 梢
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.379, 2003 (Released:2004-03-19)

【目的】当院では平成11年より障害児の早期発見、発達援助を目的に、出生体重1500g未満の極低出生体重児を対象に運動指導および発達検査を行っている。発達検査は修正4ヵ月、修正7ヵ月、修正12ヵ月、修正18ヵ月、実月齢24ヵ月、実月齢36ヵ月にて新版K式発達検査を行っている。これまでIntrauterine growth retardation (子宮内発育遅延:IUGR)児の発達は、身体は小柄であるが、むしろ成熟しているため、同じ出生体重児の早産児より発達予後は良いと考えられてきた。しかしIUGR児の発達は必ずしも順調でないことは良く知られている。今回はSmall for dates(在胎期間に比べて小さい児:SFD)児とAppropriate for dates(在胎期間に適した出生体重の児:AFD)児の修正18ヵ月における極低出生体重児の発達の傾向について比較検討したので報告する。【対象】対象は平成11年から平成13年までに当院新生児医療センターに入院し、理学療法の依頼のあった出生体重1500g未満児41名中、修正18ヵ月まで経過を追跡可能であり、PVL等明らかに後遺症を残すと思われた症例を除いた35名である。【方法】全症例を在胎週数および出生体重よりSFD児群とAFD児群に分別した。新版K式発達検査を修正月齢18ヵ月にて行った。以上より姿勢・運動領域(以下P-M)、認知・適応領域(以下C-A)、言語・社会領域(以下L-S)、全領域の4項目の発達指数(DQ)に関して、Mann-Whitney U test(有意水準5%未満)を用い統計学検討を行った。尚、DQは85以上を正常、85から70を境界、70未満を遅延とした。【結果】SFD児群6名、AFD児群29名であった。SFD児群はP-M正常5名、境界1名、遅延0名、C-A正常4名、境界2名、遅延0名、L-S正常4名、境界2名、遅延0名、全領域正常4名、境界2名、遅延0名であった。AFD児群はP-M正常20名、境界8名、遅延1名、C-A正常26名、境界2名、遅延1名、L-S正常24名、境界4名、遅延1名、全領域正常26名、境界3名、遅延0名であった。Mann-Whitney U testでは4項目において両群間に有意差は認めなかった。【考察】修正18ヵ月におけるSFD児の短期予後はAFD児と比較し有意差を認めなかった。理由として、症例数が少ないこと、一般に低出生体重児の発達の問題として挙げられている学習障害、注意欠陥多動症候群は知能指数が低下せず、さらに、症状が出現するには時期が早期であるため早期発見には修正18ヵ月における新版K式発達検査は不向きであることが考えられた。稲森らは3歳時に発達が遅延していたケースで1歳6ヵ月時に「呼んでも振り向かない」「多動」「叫声」「音に敏感」などの行動特徴が認められたと報告している。今後の課題として、症例数を増やしさらなる検討を行うとともにDQにとらわれない評価を行う必要があると考えた。