- 著者
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中嶋 有加里
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2001
平成13年度のシミュレータ実験により眼精疲労や車酔いなどシミュレータの影響と推察される問題点が判明し妊婦を対象に実験を行うことができなかった。そこで本年度は「妊婦の自動車運転の安全性に関する研究」の一環として実施した前方視的質問紙調査のデータを統計学的に分析し、自動車運転により切迫早産・早産および臍帯巻絡のリスクが増大することはないとの結論を得た。【研究方法】2001年1〜12月に大阪府泉佐野市T病院で妊婦健診に来院した妊娠28週の初産婦493名に質問紙を配布し、外来・入院カルテ、出産記録から出産情報を照合し、単胎妊婦442名の有効回答を得た。切迫早産・早産の検討では、早産の関連因子(有職者、喫煙者、運動習慣のある者、妊娠中毒症などの合併症)のある者を除いた238名、臍帯巻絡の検討では、巻絡の発生頻度に関連する因子(有職者、運動習慣のある者)のある者を除いた312名を分析対象とした。【結果】(1)運転の有無と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。切迫早産率 早産率 臍帯巻絡率ドライバー 11.7% 3.1% 39.4%ノンドライバー 16.0% 4.0% 35.6%(2)運転・乗車時間の長短を1週間総利用時間のほぼ中央値である60分で分け比較したところ、運転・乗車時間の長短と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められなかった。(3)車種と切迫早産・早産率および臍帯巻絡率との関連は認められず、振動による影響は少ないものと推察された。(4)子宮収縮の自覚では、運転中・同乗中の方が歩行時に比べて収縮を自覚する者が有意に少なく、「歩くよりも楽」という妊婦の感想を裏付ける結果となった。また、運転中と同乗中の収縮自覚の比較では有意差が認められなかった。(5)運転の有無と平均臍帯長・過長臍帯率は有意差が認められず、運転が臍帯長に影響を及ぼす可能性は低いと考えられた。