著者
児玉 洋 田倉 中川 剛士
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.405-408, 2007-04-25
被引用文献数
1 19

腐植物質は,腐植土中の有機物が分解されたものであり,かつて有機物や微生物が存在していた広範な土壌環境中に見出される.今回の実験において,コィに腐植土抽出物を経口投与すると,非定型Aeromonas salmonicida実験感染に対する抵抗性が誘導されることを発見した.10%,5%あるいは1%の割合で餌料に混合した抽出物を投与したコィにおいて,死亡率および出血や潰瘍などの皮膚病変形成は顕著に抑制された.10%あるいは5%の割合で投与したコィでは,非投与コィに比べ平均生存日数が有意に延長した.死亡魚の一部から非定型A.salmonicidaが分離されたが,Aeromonas hydrophilaおよびFlavobacteriumも分離され,皮膚病変形成過程で菌種の交代が起きていることを示している.今回の実験結果は,コィへの腐植土抽出物の投与は,A..salmonicida感染症の予防に有効であることを示している.