著者
中川 秀彦
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.5, pp.294-298, 2016 (Released:2016-05-13)
参考文献数
16

活性イオウ種は,近年注目されるタンパク質修飾因子あるいは生体シグナル因子の1つである.実験的に非常に扱いにくく,一部はガス状の分子であることから,実験系中や生体内でこれらの化学種を放出する化合物(供与剤,ドナー)が用いられることが多い.光化学反応により目的の化学種を生成する化合物を「ケージド化合物」と称するが,活性イオウ種のケージド化合物は,時間・場所を制御して投与することが可能であるため,生体内でメディエーターとしての作用を研究する上で有用である.ケージド硫化水素化合物の研究はまだ発展途上であるが,2つのグループが先行して研究を行っており,1つは,光解除性保護基が脱保護され,その後,加水分解を受けることで遊離の硫化水素を発生する.2つめの化合物は,2個の光解除性保護基が同時に脱保護されることで直接硫化水素が遊離する化合物である.それぞれの化合物に特徴があり,後者の化合物は細胞応用も可能であることが示されている.