著者
中村 好美 田辺 久美子 金 優 吉村 文貴 山口 忍 紙谷 義孝
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.30, no.7, pp.174-177, 2023-07-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
11

機能性身体症状は「症状の訴えや,苦痛,障害が,確認できる組織障害の程度に比して大きい」と定義される疼痛症候群である.今回,COVID-19ワクチン接種を契機に機能性身体症状が出現した2症例を経験した.1症例は複合性局所疼痛症候群の判定基準を満たしていた.ワクチン接種による機能性身体症状の発症メカニズムは未だ十分に解明されていないが,今回の2症例は,COVID-19ワクチンによる経験したことのない発熱や痛み,副反応による不動化,不安やうつ状態などの心理的因子が合わさり,機能性身体症状を発症したものと考えた.それぞれの病態にあわせた集学的治療や社会復帰への支援を行い,患者の回復へつなげることができた.
著者
中村 好美 吉村 文貴 田辺 久美子 山口 忍 杉山 陽子 飯田 宏樹
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-110, 2019-06-25 (Released:2019-06-28)
参考文献数
6

セロトニン症候群は,中枢および末梢神経シナプス後部のセロトニン過剰刺激によって精神状態の変化,神経・筋症状,自律神経症状を生じ,薬物の過剰摂取だけでなく,薬物の投与または薬物相互作用によって発症する.今回われわれは,慢性疼痛患者に対する少量のデュロキセチンとトラマドールの併用により,セロトニン過剰状態を起こした3症例を経験した.3症例とも併用開始直後に焦燥感があり,発汗過多,動悸,振戦のうちの1つ以上の症状が出現したが,両薬物もしくはデュロキセチンの内服中止直後に症状が改善した.セロトニン症候群の診断基準を満たしていないが,セロトニン過剰状態と考えられ注意が必要であった.デュロキセチンはCYP2D6を阻害するためトラマドールの代謝が抑制され血中濃度が上昇し,セロトニン過剰状態を引き起こしたと考えられた.さらに1症例ではCYP3A4阻害薬であるビカルタミドを内服しており,これもトラマドールの代謝を阻害したと考えられた.慢性痛を有する患者は多剤併用されることが多いが,薬物相互作用をよく理解し副作用の出現に注意が必要である.