著者
松岡 桓準 平 徳久 中村 清香 勝山 雄志 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.200-207, 2014

アスコルビン酸は生体にとって不可欠な成分であり,化粧品分野においても抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能を求めて多くの製剤に配合されている。しかし,アスコルビン酸は非常に不安定な物質で,しばしば着色・着臭をはじめ乳化系の破壊や製剤の粘度低下の原因となる。今回われわれは,アスコルビン酸とグリセリンを結合させた2種類のグリセリル化アスコルビン酸を開発した。これらはB16細胞を用いたメラニン生成抑制試験において高いメラニン生成抑制効果を示した。また,<i>in vivo</i>の連用試験ではグリセリン由来の保湿効果を示し,肌表面の紋理を整え,乾燥による目尻の小じわを目立たなくした。さらに,水溶液や粘性製剤において高い安定性を示すことも確認された。これらの結果よりグリセリル化アスコルビン酸は既存の誘導体と同様の生理活性を有するだけでなく,化粧品市場に求められる付加的機能を併せ持った保湿型アスコルビン酸誘導体であることが確認された。
著者
中村 清香 佐藤 浩昭
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.9, pp.483-493, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
27

質量分析法はポリマーキャラクタリゼーションにおいて有力な手法であり,測定装置の高分解能化とともにますますその利用範囲が拡大している.その一方で,マススペクトルが複雑になるため解析が困難になるという課題があった.その課題に対し,著者らはマススペクトルを二次元プロットへと展開することで視覚的に成分分布を表現する「ケンドリックマスディフェクト(KMD)解析」を,実用的なポリマー分析へと初めて適用した.さらにKMD解析を工業製品として用いられる複雑な組成を持つポリマー材料の組成分析へと適用するために,KMDプロットの高分解能化を行った.あわせて,KMD解析に適用できる高強度のマススペクトルを,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOFMS)で観測するための,簡便な試料前処理法を開発した.さらにKMD解析の適用範囲をMALDIのみならず,他のイオン化法を用いたデータへも拡大した.このような成果により高分解能質量分析法を用いたポリマーキャラクタリゼーションが加速されると期待される.
著者
佐藤 浩昭 中村 清香
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.281-291, 2018-05-05 (Released:2018-06-07)
参考文献数
14
被引用文献数
4

MALDI-TOF-MSは高分子材料の化学構造解析に有力な手法であるが,ポリエチレンオキシド(PEO)系界面活性剤などのイオン化効率が高い成分が共存していると目的成分のピークが観測されにくくなるという課題があった.そこで水に難溶のトリヒドロキシアセトフェノンをマトリックスに用いて試料/マトリックス混合結晶を調製し,その上に水/メタノール混合液を滴下して速やかに吸引することにより,PEO系成分を選択的に除去できる簡便な前処理法を開発した.この方法を洗髪剤の成分分析に応用し,妨害成分であるPEO系アニオン性界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウム)を除去して,配合成分のピークが観測できるようになった.得られたマススペクトルをKendrick mass defect(KMD)プロットに変換して成分分布を二次元展開したところ,様々なPEO系非イオン性界面活性剤の組成分布やPEO-水添ヒマシ油の共重合組成分布を明らかにすることができた.また,紫外線硬化塗料に含まれるPEO系界面活性剤を除去して,ウレタンアクリル系成分の化学構造情報を得ることができた.本法は,工業製品の配合情報を簡便かつ詳細に得ることができるスクリーニング手法として有効であると思われる.
著者
松岡 桓準 平 徳久 中村 清香 勝山 雄志 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.200-207, 2014-09-20 (Released:2016-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アスコルビン酸は生体にとって不可欠な成分であり,化粧品分野においても抗酸化作用をはじめとする様々な生理機能を求めて多くの製剤に配合されている。しかし,アスコルビン酸は非常に不安定な物質で,しばしば着色・着臭をはじめ乳化系の破壊や製剤の粘度低下の原因となる。今回われわれは,アスコルビン酸とグリセリンを結合させた2種類のグリセリル化アスコルビン酸を開発した。これらはB16細胞を用いたメラニン生成抑制試験において高いメラニン生成抑制効果を示した。また,in vivoの連用試験ではグリセリン由来の保湿効果を示し,肌表面の紋理を整え,乾燥による目尻の小じわを目立たなくした。さらに,水溶液や粘性製剤において高い安定性を示すことも確認された。これらの結果よりグリセリル化アスコルビン酸は既存の誘導体と同様の生理活性を有するだけでなく,化粧品市場に求められる付加的機能を併せ持った保湿型アスコルビン酸誘導体であることが確認された。