著者
中村 秀雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.219-230, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
34
被引用文献数
5 5

アスピリンが世に出てから一世紀になる. この間に, アスピリンはシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジン産生を抑制し, そのことによって抗炎症, 鎮痛および解熱作用を発現することが発見され, このCOXに構成酵素COX-1と誘導酵素COX-2の2つのアイソザイムがあることの発見, そして, COX-2を選択的に阻害する薬が開発されて, アスピリンのもつ優れた有効性を残して消化管障害などの副作用が大きく軽減された, 新しい非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が米国ならびに諸外国で医療に供されることになった. COX-1とCOX-2の生理的ならびに病態生理的役割は実験動物で明らかにされているが, 動物とヒトとの間には種族差, 病態の違いなどがある. そこで, COX-2選択的阻害薬の最新の2つ, セレコキシブとロフェコキシブの臨床における抗炎症, 鎮痛, 解熱および抗大腸がん作用とともに, 消化管障害, 腎機能障害, 血小板機能障害などの副次的作用から, COX-2の生理的ならびに病態生理的役割について推察するとともに, COX-2選択的阻害薬の有効性とその限界について考察し, これらに基づいてNSAIDsの研究開発の動向について述べた.