著者
中林 紘二 兒玉 隆之 松本 典久 山本 裕宣 野見山 通済 福良 剛志 甲斐 悟
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.151-154, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
22
被引用文献数
6 1

〔目的〕振動刺激を負荷する部位の違いが骨格筋の筋緊張に及ぼす影響を明らかにする.〔対象〕下肢に神経障害の既往がない健常男性15名.〔方法〕周波数76.6 Hz,振幅2 mmの振動刺激を用いて左下腿三頭筋の腱部あるいは筋腹部に3分間の振動刺激を行った.振動刺激前後のH波とM波の最大振幅の値から算出された最大振幅比(Hmax / Mmax)により,下腿三頭筋の筋緊張の状態を評価した.〔結果〕下腿三頭筋の腱部あるいは筋腹部に振動刺激を負荷すると最大振幅比は低下した.刺激部位で比較すると,腱部に振動刺激を負荷した場合に最大振幅比の低下は大きかった.〔結語〕負荷する部位にかかわらず,振動刺激は骨格筋の筋緊張を抑制し,臨床において振動刺激の適応が拡大することが示唆された.
著者
中林 紘二 松本 典久 水野 健太郎 藤本 一美 中川 佳郁 甲斐 悟
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.383-387, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
31

〔目的〕外側広筋に対する選択的な振動刺激が,膝関節伸展運動時の筋活動に及ぼす影響について明らかにすること.〔対象〕下肢に整形外科的疾患および神経学的疾患の既往のない健常男性10名(平均年齢26.8±9.2歳).〔方法〕外側広筋に対して持続的な振動刺激の負荷を与え,膝関節伸展運動時の%iEMG(外側広筋,内側広筋,大腿直筋)および膝関節伸展筋力を計測し,振動刺激前後で比較した.〔結果〕膝関節伸展運動時の外側広筋の%iEMGは,振動刺激後に低値であった.外側広筋に対する内側広筋の%iEMG比は,振動刺激後に高値であった.〔結語〕外側広筋に対して選択的な振動刺激を負荷した膝関節伸展運動は,外側広筋の筋活動を抑制することで相対的に内側広筋の筋活動を促進する.
著者
兒玉 隆之 中林 紘二
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A3O1045-A3O1045, 2010

【目的】脳内神経活動に伴う局所脳血液供給量の増加が報告(Roy, 1890)されて以来、さまざまな脳機能イメージングを用いた脳機能評価が報告されてきた。中でも、近赤外線分光法(Near infrared spectroscopy; NIRS)は、局在神経活動と相関する毛細血管の血行動態変化を反映することが示唆されており(Yamamoto, 2002)、脳機能評価には非常に有用である。しかし、原理的に空間分解能が低く、脳深部を含めて脳機能の局在を細かく決定することには困難を要する。そこで本研究では、表情のもつ情動刺激による課題を用いて、精神生理学的指標である事象関連電位(ERPs)P300成分の脳波・脳磁場解析プログラムLORETA(Low Resolution Brain Electromagnetic Tomography)による神経活動源推定と、NIRSによる脳血流量(Oxy-Hb)変動の同時測定を行い、時間的空間的解析による詳細な脳機能評価を試みる。<BR>【方法】対象は、健常ペイドボランティア20名(男性9名、女性11名、平均年齢27.5±4.1歳)。測定デザインはブロックデザインを用い、Taskを4回(Rest5回)施行した。Task時の課題には、情動的作用を有するヒトの「泣き顔」および「笑い顔」を標的刺激(出現率30%)、「中性」表情(出現率70%)をコントロールとした視覚オッドボール課題を用いた。測定方法は、脳波電極を国際10-20法に基づき、average referenceによりFp1・Fp2・F7・F3・Fz・F4・F8・T3・C3・Cz・C4・T4・T5・P3・Pz・P4・T6・O1・O2・Ozの部位へ装着、NIRS(日立メディコ社製, ETG-4000)も同法に基づきT3T4を端点とした3×5のプローブ(左右44チャンネル)を装着し、神経活動電位測定とOxy-Hb測定を同時に記録測定した。得られたERPsデータをもとに、Microstate segmentationによるP300成分出現時間域を算出後、LORETAによる課題施行時の脳神経活動解析を行い、Task時のOxy-Hb変動をNIRSにより検討した。<BR>【説明と同意】総ての被験者に、測定前に研究内容を説明し書面にて同意を得た。尚、本研究は久留米大学倫理委員会の承認を得て行った。<BR>【結果】Microstate segmentationの結果から、P300出現時間域は、「泣き顔」刺激課題時361~476ms、「笑い顔」刺激課題時367~482msとなり、LORETA解析では、「中性」、「笑い顔」に比べ「泣き顔」の刺激課題時に扁桃核、前頭前野で有意に高い神経活動を認めた(p<0.05)。さらに、NIRSにおいても、「笑い顔」より「泣き顔」の刺激課題時に前頭前野におけるOxy-Hbの増加を認めた。<BR>【考察】本研究は、脳機能を詳細に評価するため、LORETA解析による神経活動についての時間的空間的分解能と、NIRSによる脳血流動態の同時測定を行った。結果、前頭前野が担う認知機能は表情のもつ情動的作用の影響を受けることが強く示唆された。また、NIRSが脳神経系の電気的興奮過程を反映したものであることが明らかとなり、脳機能評価としてのマルチモーダルモニタリングとして有用であることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】脳機能評価において、非侵襲的脳機能計測法であるLORETA解析とNIRSの同時測定は、詳細な時間的空間的解析の一助として理学療法学研究において有用であると考える。