著者
青木 正哉 向原 伸彦 吉田 正人 村上 博久 邉見 宗一郎 松島 峻介 西岡 成知 森本 直人 本多 祐 中桐 啓太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.391-394, 2013

症例は71歳男性,201×年2月22日に他院にて腹部大動脈瘤破裂に対し人工血管置換術が施行された.術後3カ月目,外来の採血検査でHb 7.0 g/dlの貧血を認めたため,再入院となった.CTならびに上部消化管内視鏡検査にて,Aortoenteric Fistula(以下AEF)と診断され,手術目的にて当科転院となった.手術待機中に,吐・下血後,出血性ショックとなり,緊急でステントグラフトによる血管内治療(Endovascular aneurysm repair : EVAR)を施行した.術後,感染の再燃や消化管出血も認めず,術後58日目に軽快退院した.現在術後1年が経過しているが,再感染の兆候なく,外来にて厳重に経過観察中である.二次性AEFは予後不良であり,外科的根治術が原則である.しかし,出血からショックに陥った症例では,血管内治療はその低侵襲性と迅速性を活かしてbridge to open surgeryとして治療のオプションとなりうる.また,再感染がなく,消化管出血を認めないなどの条件が整っていれば,最終的な治療にもなりうるが,再感染および再出血のリスクを念頭に置いた観察が必要である.