著者
井上 義雄 仁藤 慎一 中浜 隆之
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

千葉県から神奈川県にまたがる首都圏の東京湾流入河川(鶴見川、多摩川、荒川、江戸川および花見川)および相模川の汚染実態を、ヒト肝がんHepG2細胞における細胞内受容体AhR依存性Ethoxycoumarin-O-deethylase(ECOD)活性の誘導を指標としたバイオアッセイ法により比較検討した。試料はそれぞれの河川の河口付近の底質より調製した。汚染状況は、京浜工業地帯に位置する鶴見川で最もひどく、江戸川が最も清澄な河川であった。鶴見川河口の底質試料では、ECOD活性が高濃度域で低下する、いわゆる逆U字型の濃度-反応曲線が得られ、主汚染物質としてダイオキシン類よりは多環芳香族炭化水素(PAH)が疑われ、底質1g当たりPAH 2〜20μgと推定された。次に、鶴見川河口の高度汚染の原因を探る目的で、新横浜地区のかつての産業廃棄物野焼き現場付近を含む流域調査を行った。野焼き現場からの汚染物質の漏出が確認されたが、河口域の高度汚染への上流からの影響は小さ<、周辺工業地帯に起国するものと結論した。HepG2細胞における誘導型ECOD活性の高濃度のPAHによるダウンレギュレーションは、タンパク質量でも再現されたが、mRNA、の発現量は飽和曲線を示したことより、翻訳レベルにおける影響と推測された。Ah応答配列(XRE)を配したレポータープラスミドを用いるルシフェラーゼアッセイにより、脱抱合処理が不可欠のECOD活性測定と比べると定量性と再現性の高い簡便な汚染調査が可能となった。