著者
伊藤 隆 木村 容子 大田 静香 山本 昇伯 須田 憲男 中澤 一弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.244-249, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

こむら返りに対する芍薬甘草湯の効果は知られているが,近年,偽アルドステロン症の副作用が多く報告されている。こむら返りに用いることのできる漢方製剤で,甘草を含まないものが期待されている。今回,こむら返り患者26例(平均年齢70.7 ± 12.1歳)に対して,甘草を含まない漢方製剤である四物湯エキスを投与したところ,改善18例(69%),不変8例(31%)であり,前者の腹力は後者よりも推計学的に有意に低い結果であった。また,特に今回の有効例のうち,代表的な4例について詳述した。四物湯は貧血様症状に用いられてきたが,こむら返りには用いられて来なかった。四物湯は,芍薬甘草湯と同等の有効率であり,実証ではない高齢者で緊急性が求められない場合にはより用いられてよい方剤と考えられる。
著者
鈴木 広道 石丸 直人 木下 賢輔 中澤 一弘 大西 尚 木南 佐織 多留 賀功 石川 博一
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.265-272, 2014 (Released:2014-10-05)
参考文献数
30

白衣・聴診器は多剤耐性菌による汚染源となるが,白衣の交換頻度,聴診器の消毒の有無に関して我が国では実態調査は行われていない.今回,国内の4病院において入院診療に携わる常勤医を対象に2013年7~8月の期間において,アンケート調査を実施した.対象医師314名中312名より協力が得られ,有効回答が得られた308名(98%)において解析を行った.白衣の交換頻度は約半数(48%)で週1回程度であり,毎日白衣を交換している医師は23名(7.5%)であった.聴診器膜面のふき取りは162名(53%)で実施されていたが,患者1人毎の診察でふき取りを行っている医師はその内37名(23%)であった.背景因子との比較において,医師経験年数(10年以上)が白衣の交換頻度の低下と独立して関連を認めていた(p=0.04).男性医師において聴診器膜面の消毒が行われる頻度が低い事が示唆された(p=0.01).いずれも施設間の差は独立因子としては認めなかった.多剤耐性菌の抑制には,毎日の白衣交換,患者毎の聴診器膜面消毒が重要であるが,本研究において適切な白衣交換,聴診器膜面消毒が行われている割合は少数であることが示された.今回のデータを基に対象施設における改善を図ると共に,大規模な実態調査を行い,白衣交換・聴診器膜面の消毒が適切に行われていない要因をより明らかにする必要がある.