- 著者
-
中澤 克佳
- 出版者
- 日本財政学会
- 雑誌
- 財政研究 (ISSN:24363421)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.142-159, 2007 (Released:2022-07-15)
- 参考文献数
- 18
団塊の世代の退職などを契機として,都市部における高齢化の急速な進展が問題となってきている。また,都市部では施設介護サービスが不足し,地域的な偏在が生じている現状から,高齢者の介護移住が注目を集めている。介護移住は都市高齢世代自身の移動や,「呼び寄せ老人」と呼ばれる親世代の呼び寄せなどが想定される。しかし,わが国では高齢者の移動に対する注目は低く,さらに既存データでは,介護保険制度施行以降の市区町村別・年齢階層別の移動傾向が把握できないことから,定量的な分析が行われていない。そこで,本稿では既存統計資料を組み合わせることによって,東京圏(埼玉,千葉,東京,神奈川の1都3県)市区町村における高齢者の社会増加を定量的に把握し分析を行った。結果として,前期高齢者と後期高齢者の移動性向は大きく異なっており,要介護リスクが高い後期高齢者は,東京圏の特に相対的に施設介護サービスが充実した自治体へ流入していることが明らかとなった。